「原発廃止を電力輸入と火力発電で相殺」=調査会社予測

原子力発電を全廃したドイツはそれに伴う電力供給の穴を国外からの輸入と国内の火力発電拡大で相殺する――との見方が浮上している。英市場調査会社ICISの試算をもとに21日付『ヴェルト』紙が報じた。

ドイツでは残存原発3基の稼働が4月15日付で停止した。これにより2024年4月15日までの1年間で電力供給量が30.9ギガワット時(GWh)減少することになる。

ICISによると、その3分の2に当たる19.8GWhを輸入で穴埋めすることになる。主な輸入先国はフランス、オランダ、ベルギー、北欧、チェコで、フランスからの輸入は約50%増の8GWhに拡大する。

フランスの発電に占める原発の割合は70%強に上る。チェコも原発と石炭発電がそれぞれ40%を占めることから、ドイツの電力消費に占める原発と火力発電の割合が大きく低下することはないと予想される。

輸入以外の残り3分の1は国内の火力発電で補うことになる。各電源の増加量については天然ガスで5.3GWh、褐炭と石炭でそれぞれ2.5GWh、石油で0.6GWhを見込んでいる。この結果、同国のエネルギー部門で排出される二酸化炭素(CO2)の量は690万トン増える見通しだ。

一方、ドイツ国内には電力輸入は増えないとの見方がある。与党・緑の党のカトリン・ゲーリングエッカルト連邦議会副議長は、「わが国は(22~23年)冬季を、ゆとりを持って乗り切った。原発の電力が全くなかったとしても問題のない状態だった」と述べた。同国がこれまでに引き続き昨年も電力の純輸出国だったことを踏まえた発言とみられる。ドイツ経済研究所(DIW)のクラウディア・ケンファート教授(エネルギー経済学)も、「我が国の発電量は国内需要を上回っている」と明言した。

上部へスクロール