流通大手メトロの家電量販子会社メディア・ザトゥーンは19日、顧客の注文を受けてから3時間以内に商品を届けるサービスを同日から全国で開始すると発表した。ドイツでは通販世界最大手のアマゾンが即日配達(SDD=「セイム・デイ・デリバリー」の略=)サービスを12日に開始したばかり。メディア・ザトゥーンは迅速な配達により顧客ニーズへの対応力を高め、需要を掘り起こす狙いだ。
傘下の量販チェーンであるメディア・マルクト、ザトゥーンの実店舗ないしオンラインショップで購入した顧客に対し迅速配達サービスを提供。商品の注文後30分〜3時間で自宅に届ける。配達料金は14.95ユーロで、顧客は注文から4日間以内であれば配達時間帯を2時間刻みで指定できる。
アマゾンのSDDサービスは朝のうちに注文した商品をその日の18〜21時に配達するというもの。料金は9.99ユーロ(年会費を支払うプライム会員は注文額が20ユーロ以上であれば無料)とメディア・ザトゥーンより安いものの、配達のスピードと柔軟性で劣る。配達地域も計14の大都市圏に限られている。
メディア・ザトゥーンは配達をミュンヘンの運輸会社ティラミゾー(tiramizoo)に委託する。ティラミゾーはSDDをドイツで他社に先駆けて開始した事業者で、提携するドイツの輸送会社は約1,600社に上る。
注文を受けた商品は最寄りの店舗から配達する。メディア・ザトゥーンには全国の約170都市に店舗(店舗数はメディア・マルクトが約240カ所、ザトゥーンが155カ所)を持つという強みがあり、国内の80%以上に地域に3時間以内で配達できる。実店舗を持たないアマゾンと異なりSDD実施に向けて配達インフラを新たに整備する必要がない。
経済紙『ハンデルスブラット』によると、実店舗を配達拠点として利用する取り組みはすでに、スウェーデンのウィンタースポーツ用品メーカーであるピーク・パフォーマンスが実施。配達に要する日数を2日短縮するとともに、同コストを14%圧縮した。
メディア・ザトゥーンは今回のサービス開始に先立ってパイロットプロジェクトを昨年5月から実施。この結果、迅速配達サービスを必要とする顧客は限られるものの、一定のニーズがあることが確認されたため、全国展開へと切り替えた。同サービスを利用するのは◇テレビ、洗濯機、ノートパソコンなど高額な商品を購入した◇旅行前日になってデジタルカムコーダーの記録媒体がないことに気付いたり、冷蔵庫が急な故障で使えなくなった――といったケースで多いという。
同社は迅速配達サービスを他国で展開することも念頭に置いており、オーストリアとオランダではすでにパイロットプロジェクトを実施中だ。