電気駆動車の普及に向けた政府諮問機関「国家プラットフォーム・エレクトロモビリティー(NPE)」は17日、車載電池セルをドイツ国内で生産することは産業競争力を保つうえで極めて重要だとして、その実現に向けたロードマップを発表した。同国では唯一、自動車大手ダイムラーがセルを自社生産していたが、生産規模が小さく採算ラインに達しないため昨年末で打ち切り、外部調達に切り替えた。国内生産の重要性は自動車業界内で認識されているものの現状では実現が難しいことから、NPEはその可能性を探りロードマップを作成した。
NPEのカーガーマン委員長(元SAP社長)は、電池は電気駆動車の価値の30〜40%を占めるうえ、航続距離などの車両性能の面でも大きな意味を持っていると指摘。そのうえで、セルは電子制御機器、ソフトウエア、冷却装置とともに電池システムを構成する重要な部品だと述べ、セルを国内で生産することの意義を強調した。
世界のセル市場に関しては◇現在は日韓メーカーの競争力が圧倒的に高い◇生産能力過剰に陥っている――として、現行世代セル(リチウムイオン電池セル)の工場をドイツに設置しても不採算だとの認識を示した。ただ、電気駆動車の販売台数が伸びればセルの供給過剰は解消されるとも指摘。次世代セルの実用化が見込まれる2020年以降に国内生産を始めるべきだと提言した。
具体的にはセル工場を1カ所建設したうえで、年産能力を25年までに13ギガワット時(GWh)へと引き上げていくべきだとしている。13GWhはセル生産のノウハウを確保するために必要な規模で、電気駆動車およそ32万5,000台分に相当するという。
投資費用は約13億ユーロ。NPEは投資費用の回収には最大10年を要するとして、その間の経営を維持するだけの財務力も必要だとしている。雇用規模は最大1,300人で、周辺雇用は同3,000人を見込む。