美的集団がロボット大手クーカにTOB

中国家電大手の美的集団は18日、独ロボット・自動化機器大手クーカに対する株式公開買い付け(TOB)計画を発表した。クーカの技術を用いて生産効率を引き上げ、人件費を圧縮することなどが狙い。クーカの中国事業拡大戦略を支援できるとして‘ウインウインの関係’を強調している。ただ、クーカはドイツの産学官が一体となって推し進める「インダストリー4.0」で中核的な企業の1社と目されており、技術流出に対する警戒感が出る可能性もある。クーカは同日、美的集団の提案を検討したうえで、立場を表明することを明らかにした。

美的集団はクーカの1株につき現金115ユーロを支払う考え。これは美的集団がクーカへの出資比率を10.2%に引き上げたことを公表した日の前日(2月3日)終値を59.6%上回る水準で、17日の終値に比べても36.2%高い。

美的集団は現在、クーカ株13.5%を保持している。TOBでは出資比率を30%以上に引き上げることを目指しており、クーカと支配契約を結んだり同社の上場を廃止する考えはないと強調している。美的集団は出資比率を30%以上に拡大することについてプレスリリースで、「クーカの独立性を保つことと、両社のより緊密な協働によりさらなる成長(特に中国で)を生む出すこととの間で適切なバランスをとる」ために必要な措置だとの立場を示した。

美的集団は昨年、新経営戦略「スマート²」を打ち出した。中国の人件費高騰などを受けた措置で、クーカの技術を投入することで生産・物流効率を引き上げる考えだ。美的集団が重視するスマートホーム製品やサービスロボットの分野でもクーカの協力を受けて新製品を開発していく方針。美的集団のクーカへの出資は同戦略に沿ったもので、同社は昨年8月にクーカ株5.43%を取得し資本参加した。今年2月に出資比率を引き上げた際は、今後も株価の水準を踏まえて1年以内に買い増す考えを示していた。

クーカは売上高を2020年までに15年の30億ユーロから45億ユーロに拡大する計画を打ち出している。中国は同目標実現のカギを握る市場で、同国売上高を4億2,500万ユーロから10億ユーロへと引き上げる考えだ。美的集団はこれを踏まえ、自社の中国販売・サプライヤー網が充実していることを指摘したうえで、クーカが同ネットワークを利用できるようにする考えを示した。

クーカの筆頭株主は機械大手のフォイトで、14年12月に資本参加した。出資比率は25.1%。フォイトの製品はメカニック系が中心であるため、インダストリー4.0分野で高い技術を持つクーカに戦略出資することで競争力を高める考えだ。

独複合企業ローグループのオーナー兼会長であるフリードヘルム・ロー氏も傘下の投資会社スウォクテムを通して10%を保持している。ロー氏はクーカ株を取得した14年9月の時点で「戦略的な目的の遂行」が出資の狙いだと明言した。

クーカに対してはこのほか、事業提携先のシーメンスが関心を持っているとの観測もある。このためフォイトとロー氏、シーメンスが今後、何らかの動きをみせるかが注目される。

上部へスクロール