自動車部品大手の独ZFフリードリヒスハーフェンは14日、スウェーデンの商用車ブレーキメーカーであるハルデックスへの株式公開買い付け(TOB)の条件を引き上げると発表した。独ブレーキ大手クノールブレムゼの対抗TOBを踏まえた内容で、1株当たりの買い取り価格を従来の100スウェーデンクローナから110クローナに変更。クノールブレムゼと同じ額へと引き上げた。独禁当局の承認を近日中にすべて取得できる見通しも明らかにしており、クノールブレムゼを難しい状況に追い込んだ格好だ。
ZFは8月上旬、ハルデックスを友好的なTOBで買収することで同社経営陣と合意した。ハルデックスに対しては当時、ルクセンブルクに本社を置く商用車部品大手のSAFホラントがTOBの意向を表明しており、ZFは白馬の騎士として対抗。これを受けSAFがハルデックス買収を断念したことから、ZFのTOBは順調に進むとみられていた。
だが、クノールブレムゼがハルデックスを1株110クローナで買収する方針を今月上旬に打ち出したため、ZFはTOB条件の変更を余儀なくされた格好だ。
同社は今回、買い取り価格を引き上げ、ハルデックスの評価額を従来の44億クローナ(4億6,200万ユーロ)から48億5,000万クローナ(5億700万ユーロ)へと上方修正したほか、TOBの成立条件を「90%超の株式確保」から「50%超の株式確保」へと大幅に引き下げた。クノールブレムゼがハルデックス株をすでに8.4%獲得していることから、ZFが90%超を確保することは難しいという事情が背景にある。ZFは自社保有分(4.18%)を含めハルデックスの資本21%以上を確保したことも明らかにした。
ZFはハルデックス買収計画について、ロシアを除くすべての独禁当局からすでに承認を獲得した。ロシア当局も今週末(17日)までに承認する見通しのため、TOBに応じたハルデックス株主への支払いを10月7日にも開始できるとしている。
クノールブレムゼは今月26日頃にTOBを開始するうえ、独禁当局からハルデックス買収を承認されないリスクもある。ZFはこうした事情を踏まえ、独禁法上のリスクがなく支払いも速やかに行える自社のTOBに応じることのメリットをハルデックス株主に強調した格好だ。
クノールブレムゼの広報担当者はメディアの問い合わせに、ZFの新たなTOB提案の内容を吟味したうえで状況評価を行い、最善の措置を決定すると回答した。