独中堅食品スーパーのカイザース・テンゲルマン(以下カイザース)を業界最大手のエデカが吸収合併する計画がとん挫した。同計画に異議を唱え裁判を起こしていたレーベなど競合企業との話し合いが13日に決裂したためで、カイザースの親会社テンゲルマンの共同出資者であるカールエリファン・ハウプ氏はカイザースの清算に向けた手続きを10月第4週(17〜23日)にも開始する考えを明らかにした。各店舗を切り売りすることになるため、独禁法上の懸念のない第三者が買収に名乗りを上げない限り、多くの店舗が閉鎖され大量の失業者が発生する見通しだ。
テンゲルマンは2014年10月、カイザースをエデカに売却することで合意した。カイザースは事業規模が小さくほぼ20年間、赤字が続いており、単独で生き残るのは不可能と判断したためだ。
カルテル庁はこれを受けて同計画の調査を開始し、15年2月、一部の地域で市場の寡占が強まるほか、商品調達面でも中堅スーパーとメーカーに不当なしわ寄せが出るとして変更を要求。エデカは計画を一部変更したものの、同庁は不十分として4月に不承認の決定を下した。
エデカはこれを受けて、同社がカイザースを買収しなければ大量の雇用が失われるとして経済相の特別許可を申請したものの、経済相の諮問機関である独占委員会は8月、カルテル庁の決定を妥当とする鑑定書を発表した。
ガブリエル経済相はそれにもかかわらず、同合併で生じる市場競争の鈍化よりも雇用維持の方が重要だと強調し、今年3月に条件付きで合併を承認した。独占委の提言に沿わない異例の措置であり、競合レーベ、ノルマ、マルカントの3社が提訴。デュッセルドルフ高等裁判所は7月、同承認を無効とする決定を下した。
エデカとテンゲルマン、経財相はこれを不服として最高裁の連邦司法裁判所(BGH)に異議を申し立てたものの、カイザースでは月当たり1,000万ユーロの赤字が出ていることから、テンゲルマンはカイザースをズルズルと保持し続けられない状況にあり、テンゲルマンの清算が現実味を帯びてきた。これに危機感を持ったサービス労組Verdiは関係各社に呼びかけ、カイザースの分割取得に向けた協議が行われていた。
カイザースの店舗は計451カ所で、雇用規模は1万5,500人に上る。立地条件の悪い店舗には買い手がつかない見通しのため、5,000〜8,000人が職場を失うとみられている。
ドイツではエデカ、レーベ、シュヴァルツ・グルッペ(リドルとカウフラント)、アルディの4大勢力が食品小売市場の85%を握っており、国内大手がカイザースを買収することは独禁法上、不可能とみられる。