炭素製品のSGLが黒鉛電極事業を売却、昭和電工に156億円で

炭素製品大手の独SGLカーボンは20日、黒鉛電極事業を手がける子会社SGL GEホールディングを昭和電工に完全売却すると発表した。黒鉛価格の大幅な下落を受けて同事業は業績に足かせになっていることから、売却や合弁化、新規株式公開(IPO)を模索していた。来年半ばの売却手続き完了を見込む。

SGL GEは独南部のマイティンゲンに本社を置く企業で、ドイツ、オーストリア、スペイン、米国、マレーシアに計6工場を持つ。従業員数は900人。2015年12月期の売上高は3億7,500万ユーロで、営業利益(EBITDA、調整済み)2,200万ユーロを計上した。黒鉛電極の世界市場で米グラフテックに次ぐ2位に付けている

昭和電工は同社を156億円(1ユーロ=115円換算)で買収。グラフテックを抜いて世界3位からトップへと躍り出る。

黒鉛電極は電気炉で鉄スクラップを溶解する際に用いられる。鉄鋼不況の直撃を受けて価格が下落。メーカー各社は業績を圧迫されている。

昭和電工は今回の買収によりコスト競争力を高める考えで、生産地域の最適化による物流・サプライチェーンの効率化や、購買力の向上を推し進めていく。また、これまで主にアジア、米国から供給してきた黒鉛電極を欧州からも提供し、世界全域をカバーする供給体制を構築する。

SGLは昨年7月に組織再編計画を発表し、経営資源を「黒鉛材料&システムズ(GMS)」と「炭素繊維・複合材料(CFM)」の2部門に絞り込む方針を発表。今年6月には黒鉛電極などを手がける「パフォーマンス製品(PP)」部門を分社化し、放出の準備を完了した。PP部門に属する陰極、アーク炉、炭素電極事業についても来年に売却する考えだ。売却益は債務の圧縮に充てる。