オーストリアで4日に実施された大統領選挙の決選投票(再選挙)で、親欧州連合(EU)派のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン候補(緑の党)が右派ポピュリスト政党・自由党(FPOE)のノルベルト・ホーファー候補に勝利した。欧米ではここ数カ月、グローバル化への不安や既存政党への市民の不満を背景にポピュリストの勢力がにわかに強まっており、墺大統領選でもホーファー候補が勝利する可能性があったが、ファン・デア・ベレン候補が無効となった5月の決選投票に続いて勝利を収めた。
オーストリアでは4月に行われた大統領選挙の一次投票で過半数を制する候補者がいなかったため、得票率が最も高かったホーファー候補(35.1%)と2位となったファン・デア・ベレン候補(同21.3%)の間で5月に決選投票が実施された。開票結果はファン・デア・ベレン候補が50.3%で、ホーファー候補(49.7%)に3万1,000票の僅差で勝利した。
これに対しFPOEは、計57万3,000枚に上る郵便投票が規定通りの方法で開票されなかったとして憲法裁判所に提訴。同裁の審理で多くの選挙管理委員が時間不足を理由に投票時間終了前に開票したり、集計係以外の職員が集計作業を行っていたなど手続き違反を認めたため、憲法裁は7月、選挙無効を言い渡した。
今回の再選挙はこれを受けて実施された。5月の決選投票以降は英国のEU離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票と米大統領選挙で虚偽の情報を流すなどして有権者の不安・不満をあおったポピュリズム勢力が勝利しており、墺のやり直し選挙でも反移民やEUの権限縮小を強く打ち出すFPOEのホーファー候補が勝利することが懸念されていた。
だが、ホーファー候補の得票率(郵便投票を除く暫定値)は48.3%と、5月の選挙から1.4ポイント低下。ファン・デア・ベレン候補(同51.7%)との差は前回の0.6ポイントから3.4ポイントへと広がった。FPOE候補が勝利することに危機感を持った有権者が投票を行ったことが大きく、投票率は5月選挙の72.65%から74%(暫定値)へと上昇した。
ただ、世論調査によると、政党別の支持率はFPOEが35%で最も高く、左右の2大政党からなる現与党は次回の下院議会選挙で過半数議席を維持できない可能性がある。