スウェーデンの商用車用ブレーキメーカー、ハルデックスは29日、独競合クノールブレムゼの同社買収計画に対する支持を撤回すると発表した。同計画の独禁審査を行っている欧州連合(EU)の欧州委員会が強い疑念を示していることから、承認を得られる見通しが極めて小さくなったと判断。昨年11月に表明した支持を取り下げた。
ハルデックスに対してはルクセンブルクに本社を置く商用車部品大手のSAFホラントが昨年7月に株式公開買い付け(TOB)を通した買収計画を明らかにした。これを受け自動車大手の独ZFフリードリヒスハーフェンは8月に対抗TOB方針を表明。ハルデックスの支持を得て友好的なTOBに乗り出した。
これに危機感を持ったクノールブレムゼは9月になってハルデックスに対するTOB計画を明らかにし、ZFとの買収合戦が始まった。
クノールブレムゼの買収提示額は最終的にZFを上回ったものの、ハルデックス経営陣はZFの買収計画に対する支持を堅持した。クノールブレムゼのハルデックス買収計画には独禁当局に承認されないリスクがあるのに対し、ZFはハルデックス買収に必要な独禁当局の承認をすべて獲得しTOBの支払いを速やかに実施できる状況にあったためだ。
だが、ZFのTOBに応じた株主は計9.59%にとどまり、同社は目標とした50%プラス1株以上を確保できなかったことから、買収を断念した。ハルデックスはこれを受けて11月、クノールブレムゼのTOB計画について、独禁法上の問題をクリアできれば支持するとの立場を打ち出していた。
クノールブレムゼはTOBの終了期限とした12月5日までにハルデックス株86.1%を確保した。TOBの成立条件は50%超の確保だったことから、買収実現に向けたハードルを1つクリアした格好だ。
欧州委員会は現在、同買収計画の本格審査を行っている。クノールブレムゼは同委の承認を得るために事業の部分売却などを提案したが、欧州委は買収が実現すると適正な市場競争が阻害される恐れが高いとみている。ハルデックスによると、同委はエアディスク・ブレーキ、EBS(電子制御ブレーキシステム)、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、ブレーキバルブ、エアトリートメント・エアドライヤー、エアサスペンションの6分野で強い懸念を示している。
ハルデックスはクノールブレムゼの買収計画に対する支持表明の際に提示した条件が満たされない公算が高まったことから、支持を撤回した。