ディーゼル車のソフト交換へ、トヨタなどは下取りプログラム実施

ディーゼル車が排出する窒素酸化物(NOx)の削減に向けた独政財界の会合が2日、ベルリンで開催され、同国の自動車業界はエンジンのソフトウエア交換を柱とする自主的な取り組みで早期削減の実現に貢献することを約束した。これにより、政府と産業界は都市部でのディーゼル車の走行禁止を回避したい考えだ。ただ、ソフトのアップデートでは削減効果が不十分との批判が強く、最高裁が走行禁止を命じる可能性を排除できないことから、メーカーは部品(ハード)レベルの修理などさらなる措置の実施を迫られる恐れもある。

欧州連合(EU)では二酸化窒素(NO2)の許容上限値が1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)に設定されている。ドイツの多くの都市では同規制を順守できない状況が続いており、7月28日には欧州排ガス基準「ユーロ5」以下のディーゼル車を対象にシュツットガルトでの走行禁止を地元行政裁判所が言い渡した。上訴できるため判決は確定していないものの、自動車業界の危機感は大きい。

ドイツ政府と国内9州の政府、および自動車業界の代表などは都市部での走行禁止を回避するために今回、「ナショナル・フォーラム・ディーゼル」という名の会合(通称ディーゼル・サミット)を開催し、対策を協議。独VWグループ、ダイムラー、BMW、オペルはソフト交換を行うことを確約した。対象となるのはユーロ5に対応したすべてのディーゼル車と、最新の排ガス基準である「ユーロ6」に対応したディーゼル車の一部で、総数は530万台。そのうち250万台は2015年に発覚した排ガス不正問題でVWがソフト交換を義務づけられている車両であるため、今回の合意に基づく実質の台数は280万台となる。

独自動車工業会(VDA)はソフト交換によりNOx排出量を平均25〜30%引き下げるとしている。米フォードはドイツに工場を持つことからVDAに加盟しているものの、ソフト交換は行わない。他の外資系企業は本社の承認が必要なことから、ソフト交換を実施するかどうかを現時点で決定していない。

また、BMW、ダイムラー、VW、オペル、フォードは旧型ディーゼル車を下取りに出して自社の電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、ディーゼル車を購入する顧客に報奨金を支給する。トヨタもディーゼル車を下取りに出して同社のHVを購入する顧客に計4,000ユーロを支払うことを明らかにした。

独自動車メーカーはこのほか、NOx濃度が高い都市を支援するためにドイツ政府が設立する基金「持続可能な都市モビリティ」に資金を提供することを確約した。基金の規模は5億ユーロで、政府と独メーカーが折半する。政府は外資系自動車メーカーにも参加を呼びかけている。

政府は会合後の声明で、排ガス不正の防止に向けてチェック体制を強化することを明らかにした。型式認定を経てすでに市販されている車両を対象に連邦陸運局(KBA)が定期検査を行うようにする。

会合を共同主催したヘンドリクス連邦環境相は今回の取り決めについて「重要な第一歩だ」と前向き評価を下しながらも、NOx削減効果が小さいとの批判を念頭に「さらなる措置が必要だ」との立場を表明した。シュツットガルトを州都とするバーデン・ヴュルテンベルク州のクレッチュマン首相も、ソフトのアップデートはNOxの早期低減を実現するために現時点で可能な唯一の手段だと述べる一方で、この措置だけでは濃度規制を遵守できないと明言した。