ドイツのジグマール・ガブリエル外相は30日、訪問先のパリで講演し、欧州諸国は共通の対中国戦略を速やかに練り上げるべきだとの認識を示した。中国が巨大な経済力を活用し欧州諸国への影響力を強めている結果、欧州連合(EU)が同国に対する批判的な立場を取りにくくなっているためで、「独自の対中戦略を展開できなければ、中国は欧州を分断することに成功する」と危機感を表明した。
ガブリエル外相は南シナ海での中国の領有権を否認した昨年7月の国際仲裁裁判所判決に言及。EUは同判決の支持を決議しようとしたが、ギリシャなど一部の加盟国が拒否したため実現できなかったと強調した。中国海運大手の中国遠洋運輸集団はギリシャのピレウス港運営会社を昨年、買収しており、ギリシャ政府は同港への中国の投資に影響が出ることを懸念し、反対に回ったという。
ガブリエル外相はまた、中国政府が主導する広域経済圏構想「一帯一路」についても、背景に地政学、文化、経済、軍事的な思惑があるにもかかわらず、EUは対抗策を打ち出さないどころか、5月に北京で開催された同構想の国際会議に招待されたことを喜んでいたと批判した。