化学大手クラリアントとハンツマンが合併断念

スイス特殊化学大手のクラリアントは27日、米同業ハンツマンとの合併計画を両社の合意のうえで中止すると発表した。同計画に反対する株主が株式を買い増したことで、合併に必要な3分の2以上の株主の承認を確保できない公算が高まったため。市場関係者は今回の合併断念でクラリアントは再び競合の買収標的になるとみている。

両社は5月に合併合意した。化学業界では収益力の低迷を背景に近年、M&A(企業の合併・買収)の動きが活発化しており、これに連なった格好だ。合併が実現すれば、新会社の売上高は132億ドルに達し、特殊化学最大手の独エボニック(152億ドル)に次ぐ2位に浮上する見通しだった。

合併は株式交換方式で実施し、合併後に設立する新会社の出資比率はクラリアントの株主が52%、ハンツマンが同48%となっていた。

米ヘッジファンド系の投資会社ホワイト・テールはこれに対し、クラリアントの価値が過小評価されていると批判。また、合併そのものも問題視し、クラリアントに樹脂・コーティング部門の売却を迫った。

ホワイト・テールは合併計画を破たんさせるためにクラリアント株を買い増し、20%を確保した。ホワイト・テールに同調する株主が存在することもあり、クラリアントとハンツマンは計画断念に追い込まれた格好だ。

M&Aの動きが活発な化学業界でクラリアントは格好の買収標的とみなされていた。有望な事業を抱えるうえ、資金力のある競合であれば買収可能な規模の企業であるためだ。ハントマンとの合併には買収の対象となる前に主体的に動いて業界の主要プレイヤーへと浮上するという狙いがあり、クラリアントのハリホルフ・コットマン社長は合併計画発表の際に「今後5〜10年間、売上高で少なくとも130億〜140億ドルを実現する企業が業界再編のトレンドを主導していく」との見方を示していた。

独BASFとランクセスは少なくとも同計画発表前の時点で、クラリアントの買収を狙っていたもようだ。また、独エボニックは同社の部分買収を検討しているとされる。