独複合企業ティッセンクルップと印タタ製鉄は6月30日、両社の欧州鉄鋼事業を合弁化することで最終合意したと発表した。欧州鉄鋼各社は過剰設備と低価格の中国製品流入を背景に業績不振が構造化していることから、両社は新会社で組織のスリム化とコスト削減を実現。競争力を強化する意向だ。
両社は昨年9月、それぞれの欧州鉄鋼事業を合弁会社に移管することで合意。デューデリジェンス(資産査定)などを進めてきた。
当初は今年初頭に本契約を締結する予定だったが、タタが労組の承認確保に手間取ったことから、ずれ込んだ。ティッセン側は労組の同意を昨年12月に確保していた。本契約が遅れたことから、合併手続きの完了時期も当初予定の今年末から来年春に延びる見通しだ。
折半出資の合弁会社ティッセンクルップ・タタ製鉄を蘭アムステルダム圏に設立する。新会社は取締役会と監査役会をあわせ持つ経営体制を採用。ティッセンは新会社に欧州鉄鋼事業と鉄工所向けサービス事業、タタ製鉄は欧州事業をそれぞれ持ち寄る。
ティッセンクルップ・タタ製鉄は平鋼生産高が年およそ2,100万トン(プロフォーマベース)、売上高が約150億ユーロ(同)、従業員数が約4万8,000人(同)で、欧州ではアルセロールミタルに次ぐ2位メーカーとなる。
業務開始後は調達、間接費の削減、工場稼働率の引き上げなどを通して年間コストを4億〜5億ユーロ圧縮する。コスト削減幅は当初見通しの4億〜6億ユーロから引き下げられた。新会社ではこのほか、営業活動に必要な資金である運転資本の改善と投資を通してもシナジー効果を引き出す考えだ。
これらの措置の実施に伴い、従業員を最大4,000人削減する。削減は管理部門で同2,000人、生産部門で同2,000人を予定。ティッセン側の削減規模は出資比率に応じて約2,000人となる。
ティッセンとタタが新会社にそれぞれ持ち込む資産の評価額は昨年9月の基本合意時点で同額だったものの、その後の業績に差が出たことから変動が生じた。両社はこれを受けて今回、新会社への出資比率を各50%に据え置くものの、◇同社の新規株式公開(IPO)を行った場合は公開益の55%をティッセン、45%をタタが受け取る◇IPOを実施する場合はその時期をティッセンが単独で決定する――ことを取り決めた。
ティッセンクルップは業績が悪化していた南北アメリカ大陸の鉄鋼事業からすでに撤退している。今回の欧州合弁合意により、大きなリスク要因となっている鉄鋼生産事業からの全面撤退にめどを付けたことになる。今後は経営資源を景気変動の影響が少なく利益率も高い昇降機、自動車部品、産業機械などの分野に絞り込む意向だ。