独送電網への中国資本の出資を政府が再度阻止

政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)は27日、独送電網事業者50ヘルツの資本20%を政府の委託で取得すると発表した。政府は中国の国有送電会社、国家電網(SGCC)が同20%を取得しようとしたことから、これを阻止するために背後で画策。KfWによる買い取りを取りまとめた。政府は50ヘルツへの国家電網の出資計画を3月に阻止したばかり。経済・安全保障上の重要なインフラである送電網に欧州連合(EU)と欧州自由貿易連合(EFTA)域外の企業が出資することを絶対に回避する考えだ。

50ヘルツは独東部とハンブルクで送電事業を展開する企業。もともとはスウェーデンの電力大手バッテンフォールの子会社だったが、EUの送発電分離政策を受けてベルギーの送電大手エリア・システム・オペレーターと豪投資ファンドIMFインベスターズが2010年に共同買収した。買収時点の出資比率はエリアが60%、IMFが40%。IMFが出資比率を引き下げる場合はエリアに優先的な購入権があることが取り決められていた。

IMFは2月、出資比率を40%から20%に引き下げる意向を表明した。エリアは当初、先買権を行使しない考えだったことから、IMFは国家電網に売却する方向で交渉を行った。

だが、自国企業を地政学の駒として利用する中国の資本が送電網の運営会社に参加することをドイツ政府が強く懸念。国家電網の出資阻止に向けて50ヘルツの出資者に水面下で働きかけを行い、エリアが先買い権を行使し出資比率を80%に高める取引を成立させた。

国家電網はそれでも50ヘルツへの出資を断念せず、IMFに働きかけて残り20%の取得を目指した。これを知ったドイツ政府は再び背後で工作を行い、KfWによる同20%の取得を取りまとめた。具体的にはエリアが再び先買い権を行使して20%を取得。その直後にKfWへと転売する。KfWは同20%を当面、保持するものの、将来的には売却する考えだ。

政府がこうした工作を行った背景には、法律に基づく方法では国家電網の出資を防げないという事情がある。ドイツでは貿易法の規定により、公共秩序・セキュリティに支障が生じる恐れがあると経済省が判断した場合、EUおよびEFTA域外の企業が自国企業に25%以上、出資することを禁止できるものの、国家電網は50ヘルツの資本取得を20%にとどめる計画だったことから、同法に基づく審査を行えない状況だった。

政府は中国企業が工作機械製造の独ライフェルト・メタル・スピニングを買収する計画も阻止する考えのようだ。経済誌『ヴィルトシャフツボッヘ』が報じたもので、8月1日の閣議で正式決定するという。貿易法の拒否権を行使することになる。

独産業連盟(BDI)のシュテファン・マイル理事は国家電網の出資を阻止した政府の行為について、外資の対独投資に悪影響をもたらすと批判した。

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