化学大手の独BASFは22日、電池正極材工場をフィンランド南西部のハルヤヴァルタに建設することを正式決定したと発表した。同社はすでにアジアと米国市場で正極材の供給体制を構築済み。欧州に新工場を開設することでグローバルな供給能力を高め、電動車向け需要を取り込んでいく考えだ。
昨年に打ち出した総額4億ユーロ強の投資計画の一環として新工場を設置する。年産能力は電動車およそ30万台分。2020年末から生産を開始する。工場の電力は水力、風力、バイオマスと再生可能エネルギー由来のものを用いる。
原料のニッケルとコバルトは隣接する露ノリリスク・ニッケル(ノルニッケル)の製錬所から調達する。BASFは昨年6月、リチウムイオン電池正極材の供給体制を欧州に構築するためにノルニッケルと独占交渉を開始することを明らかにしていた。
電池セルの分野では日韓中メーカーの競争力が高く、欧州メーカーはセル生産を行っていない。だが、電動車の価値の大きな部分を占めるセルを域外メーカーに全面依存すると産業競争力が弱まる懸念があることから、欧州連合(EU)の欧州委員会やドイツ政府は欧州企業によるセルの共同生産を実現したい考えだ。BASFは今回の投資決定がこの目標の実現に寄与するものだとの認識を示した。同社は今後さらなる正極材工場を欧州に建設する方向で検討を進めている。