産業ロボットのクーカでCEOが早期退任、中国親会社と関係悪化

産業ロボット・オートメーション機器大手の独クーカは26日、ティル・ロイター最高経営責任者(CEO)が任期満了を待たず12月に退任すると発表した。理由は明らかにしていない。メディア報道によると、同社を昨年買収した中国家電大手・美的集団との関係悪化が背景にあるもようだ。後任は未定で、ペーター・モーネン財務担当取締役が暫定CEOに就任する。

ロイターCEOはリーマンショックに端を発する金融・経済危機でクーカの経営が悪化した2009年にCEOに就任。経営再建に成功し同社をつながる工場「インダストリー4.0」の分野でカギを握る花形企業へと発展させた。

クーカの技術力に目をつけて美的集団が16年に株式公開買い付け(TOB)を実施した際は、中国企業による最先端技術の「買いあさり」を懸念する国内の論調に反論。美的集団によるTOBを明確に支持した。

ロイターCEOと美的集団の関係は買収後もしばらく良好で、同CEOの任期は17年に22年3月末まで延長された。

クーカは美的集団の傘下に入ることで中国市場の開拓を加速し、同市場のトップ企業になる考えだった。だが、中国の産業ロボット需要はこのところ低迷。価格競争が厳しくなっていることもあり、同社製品の販売は鈍っている。

『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、美的集団はこれを受けて、家庭用ロボットの開発を加速するようクーカに要求した。ロイターCEOは家庭用ロボットを美的集団向けに開発することに同意していたものの、自動車など主力顧客産業向けの業務をおろそかにすることはできないことから、家庭用ロボットの迅速開発という美的集団の要求に応えられなかったもようだ。美的集団との関係は険悪になっていたという。

中国企業に買収された他のドイツ企業でもドイツ人社長の解任が目立つ。中国の建機大手、三一重工の傘下に入ったコンクリートポンプ製造のプツマイスターと、河北凌雲工業集団に買収された乗用車用ドアロックシステム製造のキーケルトでは社長が突然解任。自動車向け内装品・シート製造大手の独グラマーでも寧波継峰汽車零部件による買収が成立した直後にCEOを含む取締役3人が辞任した。

今回のロイターCEO退任を受けて、中国に対する懐疑的な見方がドイツの産業界で強まっている。

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