ドイツ銀に立ち入り捜査、資金洗浄などのほう助容疑で

独フランクフルト検察などは29日、ドイツ銀行を対象に立ち入り捜査を実施した。租税回避地を利用した顧客の資金洗浄や脱税をほう助していた疑いが持たれている。押収対象の証拠物件は極めて多く、立ち入り捜査は30日も行われた。

検察官と警察官、税務職員およそ170人がフランクフルトにある同行本社ビルとオフィス4カ所、個人宅1カ所を捜査した。立ち入り対象には取締役専用のフロアも含まれる。

容疑は租税回避地に顧客が資金洗浄や脱税目的のペーパーカンパニーを設立することをサポートしてきたというもの。例えば英領ヴァージン諸島にある同行の子会社は2016年の1年間だけで、計900以上の顧客と3億1,100万ユーロの取引を行っていた。

捜査当局はドイツ銀の行員2人が違法なほう助を行っていたと判断。このほかにも関与した行員がいるとみて捜査を進めている。メディア報道によると、当局はコンプライアンス担当のシルヴィー・マテラ取締役の事務所にも立ち入ったという。

ドイツ銀はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作や米モーゲージ担保証券(MBS)の販売など過去の不正行為に絡んで巨額の引当金を計上。これらの法務費用は業績の大きな足かせとなってきた。

同行はこれを受けて、コンプライアンス体制の強化に取り組んできた。だが、今回の捜査は2013年から今年までを対象としており、法令順守が行内で徹底していないことが浮き彫りになった格好だ。

捜査当局は2016年にメディアが公表した租税回避に関する法律事務所の内部文書、「パナマ文書」などを分析したうえで、ドイツ銀に対する捜査を開始した。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、同行はパナマ文書の公表後、刑事告発を行い捜査に協力してきた。当局が今回、立ち入り調査に踏み切ったのは、協力を不十分と判断したためとみられる。