独ダイムラーの乗用車部門メルセデスベンツ・カーズは24日、新しい調達方針を発表した。車両の電動・IoT化や通商摩擦などの政治リスク、資源問題を踏まえ、技術革新や柔軟性、環境・人権保護をこれまで以上に重視する必要があると判断したため。サプライヤーはこれに見合った対応を求められることになる。
自動車は今後、動力源が石油から電力に移行していくほか、情報通信技術の進展によって「走るスマートホン」へと進化していく。ダイムラーはこれを踏まえ、「コネクテッド(C)」「オートノモス(A)」「シェアド・アンド・サービス(S)」「エレクトリック(E)」の計4つを将来のモビリティの最も重要なトレンドと予想。これらの分野で事業を強化するために、それぞれの頭文字をとった「CASE」という名の企業戦略を2017年に打ち出した。
CASEでは斬新な新技術をいち早く取り入れられるかどうかが競争力を大きく左右することから、メルセデスはこれら4分野で新技術のスカウティングを絶えず実施。既存のサプライヤーだけでなく、スタートアップ企業の技術開発動向を注視しながら、社外の画期的な技術を開発の早い段階で取り込んでいく。
現地調達比率も引き上げる。同社の組み立て工場の近くにサプライヤーの工場があると利便性が高いためだ。国家間の関税合戦が起きても影響を小さく抑えられるという計算もある。
市場のボラティリティ(乱高下)や個々の顧客の細かなニーズに対応するために、サプライヤーに対しては柔軟性も要求する。また、メルセデスのブランド個性に影響しない分野の部品については、モジュール部品として調達する方針を強化。調達コストを圧縮する。
部品の原料となる資源に関しては採掘現場などで人権侵害が起きていないことを調達の条件とする。全サプライチェーンの人権状況を把握するために同社は「人権尊重システム」という調査システムをすでに開発した。
有限な資源の使用量を可能な限り減らすことも目指しており、省資源化の可能性を開発の初期段階からサプライヤーとともに検討していく。