政府支持率61%に急上昇、SPDの最低保障年金構想が追い風に

ドイツ政府に対する国民の信頼感が回復してきた。公共放送ZDFの委託で世論調査機関ヴァーレンが実施した最新の有権者アンケート調査(5~7日に実施)によると、「政府の仕事ぶりに満足している」との回答は61%に上り、8カ月ぶりの高水準に達した。1月末の前回調査では51%にとどまっており、短期間で急上昇した格好だ。

昨年3月に成立した現政権(第4次メルケル政権)は難民政策をめぐる与党内の対立や憲法擁護庁(BfV)長官更迭問題での安易な妥協で有権者の反感を買い、支持率が大きく低下。昨秋の州議会選挙で与党3党がすべて大敗したことから、最大与党キリスト教民主同盟(CDU)のメルケル党首(首相)は党首辞任へと追い込まれた。

政府の支持率が今回、大幅に上昇したのは、独自色を打ち出して党勢回復を図りたい中道左派の与党・社会民主党(SPD)が年金支給額の最低水準を保障する構想を提唱したためだ。

フベルトゥス・ハイル労働相によると、最低賃金で40年間、働いて得られる年金は月514ユーロに過ぎず、生活保護の水準を大幅に下回る。同35年であれば448ユーロとさらに低い。SPDはこうした現状を踏まえ、35年以上、保険料を納めた市民であれば最低でも月897ユーロの年金支給を保障する政策案を打ち出した。最低賃金で35年間、働いた人は受給額が449ユーロ(100%)増える計算だ。同40年の人も447ユーロ(87%)の増額となる。

35年以上働いたにもかかわらず年金受給額が低い人のなかには、例えば夫の年金水準が高く、生活に困らない主婦なども含まれる。こうした主婦は年金支給額が上乗せされなくても生活に困らないが、SPDは上乗せの必要があるかどうかの審査を行わずに一律で上乗せを行う考えだ。

与党は政権協定で、年金保険料を35年以上、納付した就労者に生活保護を10%上回る「最低年金」を保障する政策方針を取り決めた。生活保護は現在、796ユーロ(全国平均。家賃が高い大都市部はこれを上回る)であることから、条件を満たしていれば月870ユーロが保障されることになる。

SPDが打ち出した政策は金額面では与党合意から大きく外れていないものの、支給額の上乗せが必要かどうかの審査を行わないとしていることから、連立先のCDU、キリスト教社会同盟(CSU)は反発している。

だが、ヴァーレンのアンケートでは61%がSPDの提唱を支持しており、反対は34%にとどまった。

SPDは同党の主導で2000年代に実施された構造改革と、CDU/CSUとの連立に伴う独自性の希薄化を背景に支持率が長期低落傾向にある。今回は社民らしい政策を打ち出したことから、支持率が前回調査を2ポイント上回る16%へと上昇した。CDU/CSUと右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」はそれぞれ1ポイント後退。他の政党は横ばいだった。

アンケートではディーゼル車の走行禁止についても質問。走行禁止に反対との回答は71%に達し、1年前の53%から18ポイントも増えた。昨年2月の時点では走行禁止が国内で実施されてなかったが、今年は1月からシュツットガルトで実施されるなど、問題がひしひしと感じられるようになってきたことから、反対が増えたもようだ。環境政党・緑の党の支持者でも50%が反対と回答した。

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