温出効果ガスの排出削減計画は違憲、31年以降の目標値設定を議会に命令

ドイツの温出効果ガス排出削減目標を定めた環境保護法(KSG)は違憲として環境保護活動家などが提訴していた係争で連邦憲法裁判所(BVerfG)は29日、訴えを一部認める決定を下した。2050年に炭素中立を実現するとしているにも関わらず同法に明記されている削減目標値が30年までにとどまり、31年以降は記されていないことを裁判官は問題視。排出削減の負担の多くの31年以降に先送りすることは将来の世代の自由権を不当に制限することになるとして、22年末までのKSG改正を議会に命じた。議会は31年から50年までの温出効果ガス排出削減目標値を同法に盛り込むことを義務付けられる。

KSGは2019年12月に可決・施行された。温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定を踏まえたもので、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を同量とする炭素中立を50年までにほぼ実現するという目標を明記している。

同法には排出量を30年までに1990年比55%以下に削減するとの規定がある。また、これを実現するためにエネルギー、製造業、運輸、建造物、農業、ごみ処理・その他の6部門の年排出許容量を設定することも記されている。31年以降はそうした具体的な数値目標がないことから、憲法裁は違憲と判断した。温出効果ガスは生活のほぼすべての領域で排出されることから、将来の排出削減義務は実質的にあらゆる種類の自由に影響をもたらす恐れがあるという論理だ。

経済界は今回の判決を歓迎している。独産業連盟(BDI)は、炭素中立実現に向けた31年以降の排出削減目標値が設定されれば、企業は技術開発や投資面で長期の事業計画を立てやすくなると指摘。製造業はCO2を排出しない製造技術などのイノベーションで温暖化防止に貢献できるとの見解を表明した。

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