独ダイムラーの商用車子会社ダイムラー・トラックは19日、水素燃料電池トラックの試験を開始したと発表した。今後は年内に公道走行、2023年に顧客による試験運用をスタート。27年から量産車の販売を行う計画だ。ダイムラー・トラックのマルティン・ダオム社長は、炭素中立の電気トラックないし水素燃料電池トラックを用途に応じて顧客に提供する意向を表明したうえで、長距離走行では燃料電池トラックが必要不可欠になると強調した。燃料電池は乗用車でも商用車でも将来性がほとんどないとする競合フォルクスワーゲン(VW)と対極の立場だ。
ダイムラーは1回の水素燃料のフル充填で1,000キロメートル以上、走行できるトラックを開発している。同社の内燃機関トラック同様、10年間で120万キロを走行するという使用条件を想定。車両と部品にはそれに見合った耐久性を求めている。
今回の試験には昨年9月に初公開したコンセプトカー「GenH2 Truck」を投入した。試験では長時間の使用、様々な天候と道路条件、運転操作に焦点を当てている。すでに連続負荷状態で数百キロメートルの台上走行を行った。また、テストコースで急ブレーキなど極限状況の試験を行った。
燃料電池車は燃料電池システムや電動パワートレインなど内燃機関車にはない部品を搭載している。これらの部品を搭載することで振動や緊急時にどのような力が車両にかかるのかを同社は試験を通して早期に把握する考えだ。
燃料には気体水素でなく液体水素を投入する。タンクを小型・軽量化できるメリットがあるためで、積載量とスペース、および走行距離を拡大できるとしている。
昨年12月には燃料電池トラック向けの次世代液化水素補給技術の開発で工業ガス大手のリンデと協業合意した。水素を簡単に補給できる技術を開発することで、補給技術の国際標準を確立するとともに、水素燃料電池トラックの受容を促進する狙いだ。