中国海運大手COSCOがハンブルク港に出資の方向

中国国営の海運大手、中国遠洋海運集団(COSCO)がハンブルク港に出資する可能性が高まっている。同港運営会社HHLAのアンゲラ・ティッツラート社長は17日の講演で、「(COSCOの出資受け入れに向けた)交渉はかなり進展している。近いうちに成約すると思う」と明言した。ドイツ政府が承認すれば、実現する見通しだ。

COSCOはハンブルク港トラーオルト・コンテナター埠頭に出資する方向で交渉している。出資比率は不明。ティッツラート社長は過半数未満と述べるにとどめ、具体的な数値を明らかにしなかった。複数のメディア報道によると35%を取得するもようだ。

ハンブルク港の貨物取扱量に占める中国貿易の割合は約30%と断トツで多い。トラーオルト埠頭にはCOSCOの貨物船が定期的に寄港している。ティッツラート社長はCOSCOとの事業関係が36年に上ることを挙げたうえで、同社を「わが港により緊密に結び付けたい」と狙いを語った。

COSCOは中国政府が世界の覇権を握るために推進する「一帯一路」プロジェクトの主要な担い手で、2017年にはギリシャのピレウス港湾公社の株式67%を取得した。ハンブルク港への出資にも地政学的な狙いがあると懸念されている。同社長はこれを踏まえ、「我々は中国のパートナーにHHLAを売却するわけではない」と強調。COSCOの出資後もトラーオルト埠頭には他の海運会社の船舶が寄港できると請け合った。HHLAに69%出資するハンブルク州のペーター・チェンチャー首相は7月の時点で、同埠頭へのCOSCOの出資は「政治的な取り組みではない」と明言し、歓迎の意を示している。

ドイツの重要インフラに欧州連合(EU)域外の企業が出資する場合、連邦政府は貿易法の規定に基づいて審査を行う。港湾は重要インフラに該当するため、COSCOとHHLAの今回の取引は審査対象となる。HHLAはすでにCOSCOの出資計画を政府に通知済み。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、所轄官庁は審査を開始したという。

HHLAがCOSCOからの出資受け入れを目指す背景には、中国との取引なしに今後の成長を確保することはできないという事情がある。貨物の取扱量で競合の蘭ロッテルダム港、ベルギー・アントワープ港に差を付けられていることもあり、COSCOとの関係強化を通して巻き返しを図る考えだ。

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