鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップが電解槽製造子会社ウーデ・クロリンエンジニアズの新規株式公開(IPO)を実施するとの観測が浮上している。ブルームバーグ通信が消息筋の情報として報じたもので、来年1-3月期に株式市場デビューを果たす可能性があるという。ティッセンは報道内容へのコメントを控えている。
ティッセンはウーデについて様々なオプションを検討している。マルティーナ・メルツ社長は今春、IPOも選択肢の1つであることを明らかにしていた。
経済脱炭素化の波に乗り、ウーデはこのところ大型受注を相次いで獲得。ドイツ政府が支援する水素プロジェクトにも複数、参加している。将来性は高く、ブルームバーグは同社の時価総額が最大50億ユーロに達すると報じた。これはティッセンの時価総額(60億ユーロ)とほぼ同額で、ウーデは市場から高く評価されている。
ティッセンは一時、経営が悪化していたが、収益力の高いエレベーター部門を昨年、売却したことで資金繰りが改善。現在は鉄鋼市場の好況が追い風となっていることもあり、ウーデを放出して資金を得る必要性は低い。このためウーデのIPOを実施しても、過半数株を手元に残し、同子会社の成長の蜜を享受し続けると目されている。