豪富豪が独へのグリーン水素輸出に意欲

オーストラリアの富豪で鉄鉱石採掘大手フォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)の会長を務めるアンドリュー・フォレスト氏がドイツへのグリーン水素輸出に向け着々と準備を進めている。同氏は15日、独経済省で同国の有力企業の経営者と会談。その後のインタビューで遅くとも2024年までにグリーン水素の生産を開始し、ドイツに輸出することに意欲を示した。経済紙『ハンデルスブラット』が同氏への取材などをもとに17日付で報じた。

ドイツは炭素中立の実現に向け、再生可能エネルギー電力を用いて製造するグリーン水素を積極的に活用する方針を昨年、打ち出した。グリーン水素の国内需要が30年までに90~110テラワット時(TWh)に拡大すると予想している。太陽光と風力資源が潤沢でない同国でそのすべてを生産することはできないため、国外から輸入する計画。すでに中東・アフリカ諸国、カナダ、オーストラリアとの間で基本合意を締結している。

フォレスト氏は太陽光、風力発電を利用してオーストラリアで早ければ23年にグリーン水素の生産を開始する。年産量を段階的に引き上げていき、30年には最低でも1,500万トンとする目標だ。これはドイツの同年のグリーン水素国内生産目標(50万トン)の30倍に上る。

独経済省では化学大手BASF、コベストロ、工業ガス・プラント大手リンデ、エネルギー大手RWE、ユニパー、鉄鋼・電解槽大手ティッセンクルップ、金融大手ドイツ銀行の代表と会談した。ある財界人は同紙に、フォレスト氏の構想は地に足がついていると指摘。他の多くのグリーン水素プロジェクトと異なり計画が具体的で進展した段階にあるとの見方を示した。

フォレスト氏によると、まずは日本と韓国が水素市場として先行し、欧州がこれに続く見通し。グリーン水素の製造コストは大幅に下がると予想している。同氏は10月、欧米メーカー製の電解槽は割高だとして、自ら量産を行う意向を表明した。