エネルギー安定確保法改正へ、最終手段として企業の国有化も

ドイツ政府は25日、エネルギー安定確保法改正案の起草支援を決議した。ロシアのウクライナ侵攻とそれに起因する制裁合戦を受け、天然ガスなどの輸入が今後、大幅に減り国内供給不足に陥る懸念を踏まえた措置。危機的な状況が発生した場合、迅速かつ有効に対処できるようにする狙いだ。ロベルト・ハーベック経済相は「(エネルギー)価格は高騰し、(供給の)不確実性は大きい。リスクは現存する。このためわが国は状況の悪化に対処できるよう準備しなければならない」と語った。法案は与党が議会に提出する。

ドイツはエネルギーをロシア産の化石燃料に強く依存している。特に天然ガスは輸入の55%を同国から調達しており、ロシア政府が西側諸国の制裁への対抗措置として供給量を大幅に減らしたり停止すると、経済と市民生活に大きなしわ寄せが出るのは確実。そうした事態を想定し、政府・与党は法改正に踏み切る。

最大の柱はエネルギーインフラ事業者が安定供給の義務を果たさない場合、経済省の権限でそれらの企業を一時的に信託管理下に置くというもの。必要があれば最終手段として国有化も実施できるようにする。

法案にはまた、天然ガスの売買に関するデジタルプラットホームを開設することも盛り込まれた。天然ガスの供給が減少した場合に配給制を速やかに導入できるようにすることが狙いで、プラットホームにはガス販売事業者と大口需要家を登録。調達・消費量などのデータをリアルタイムで把握できるようにする。国はこのデータに基づき、どの企業にどの程度の量のガスを供給するかを決める。工場の操業停止に追い込まれる企業が出てくる可能性がある。

天然ガスの輸入量が大幅に減り、価格高騰が一段と進んだ場合は、ガス販売事業者に値上げを認める。販売事業者の経営悪化・破綻を防ぐことが狙いだ。

政府は25日、エネルギー経済法改正案も了承した。ガス貯蔵施設の操業停止・廃止を許可制とすることが柱。これにより国が知らないうちに国内の貯蔵容量が減る事態を回避する狙いだ。連邦ネットワーク庁(BNetzA)が所轄官庁となる。

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