独複合企業ティッセンクルップは10日、軍用船子会社ティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)が1月に経営破たんした独造船会社MVヴェルフテンを部分買収すると発表した。独北部のヴィスマールにある造船所を取得する。取引金額は公表しないことで合意した。
MVヴェルフテンは年初に経営破たんしたクルーズ船運航会社ゲンティン香港の元子会社。ゲンティン香港は2016年、経営破綻の危機に直面していた独造船所会社ノルディック・ヤーズを買収し、新会社MVヴェルフテンとして再スタートさせた。MVヴェルフテンはヴィスマールのほか、ロストック、シュトラールズントに造船所を持つ。
ゲンティン香港による買収当時はクルーズ船旅行市場が旺盛だった。クルーズ船を建造できる造船会社は限られ、発注しても受け取りまでに長い時間を要する状況だったことから、ゲンティン香港は買収により自ら建造に乗り出すことにした。
だが、コロナ禍の発生後は感染リスクの高いクルーズ船旅行の人気が急低下。MVヴェルフテンはゲンティン香港同様に経営が悪化し、1月に会社更生手続きの適用を裁判所に申請していた。
TKMSは買収するヴィスマールの造船所で軍用船を建造する。まずはドイツ政府から受注した潜水艦の建造を2024年に開始。受注があれば水上艦も造る。
雇用は当初、約800人で、受注状況に応じて1,500人以上に増やす。MVヴェルフテンの元従業員を優先採用する意向だ。