ガス輸入大手ユニパーが公的支援を申請

独天然ガス輸入最大手のユニパーは8日、公的支援を政府に申請した。調達価格の急騰で資金繰りが悪化したエネルギー企業を国が支援しやすくするための法改正案が議会で成立したことから、速やかに申請を行った。ロベルト・ハーベック経済・気候相は、支援策を速やかに策定する考えを示すとともに、同社の経営破たんとそれに伴う世界エネルギー市場の混乱を回避しなければならないと強調した。

ユニパーは6月末、公的支援を受ける方向で政府と協議していると発表した。ロシアからの供給の大幅減を受けて調達コストが大幅に膨らみ、今後の資金繰りに懸念が出てきたためだ。

ロシア国営ガス会社ガスプロムは6月中旬、ガス管「ノルドストリーム1」の供給量を容量の40%へと削減した。ガスプロム最大の国外顧客であるユニパーはこの結果、契約量の40%しか供給を受けられなくなっている。

同社は都市エネルギー公社などドイツ国内の顧客に契約で定められた量を供給しなければならないことから、ロシア産以外の調達を拡大した。ただ、ガス価格は世界的に高騰していることから、スポット・先物市場で購入するとコストは大幅に膨張。これが同社の財務を圧迫している。調達価格が上昇しても、一定期間内は値上げできないという事情がある。

政府・与党はガス会社の資金繰り悪化に対処するため、エネルギー安定確保法(EnSiG)改正案を5日に作成。7日の連邦議会(下院)と8日の連邦参議院(上院)で成立させた。

ユニパーは今回、同改正法に基づく支援を申請した。政策金融機関KfWの融資枠を現在の20億ユーロから拡大することのほか、国の資本参加を求めている。親会社フォータム(フィンランド)はユニパーを再編し、国有の供給安定会社を設立することを提案した。

ユニパーのクラウスディーター・マオバッハ社長は記者会見で、ガス価格が現在の水準にとどまれば、今後数カ月で最大100億ユーロの損失を計上する見通しを明らかにした。

今回の法改正では、調達価格の上昇分を川下に速やかに転嫁する「価格調整メカニズム」の新たなルールが追加導入された。これまでのルールは調達価格の上昇分を川下に直接転嫁するというもの。これに対し「均等価格調整メカニズム」と呼ばれる新ルールでは調達価格の上昇分が、ガス料金に上乗せされる分担金を通して負担されることになる。

ただ、どちらのルールも川下企業や消費者のコスト負担を大幅に増やすという大きな副作用を伴うことから、政府は発動を見合わせている。ユニパーは今回、価格調整メカニズムの発動も要請しているため、政府の対応が注目される。

メディア報道によると、ライプチヒのガス取引会社LNGも公的支援を申請する可能性がある。