IoT大手の独ボッシュは13日、半導体事業の強化方針を打ち出した。市場の拡大が見込まれるほか、欧州連合(EU)が同産業の育成に重点的に取り組んでいることを受けた措置。EUの「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで2026年までに30億ユーロを投資する。シュテファン・ハルトゥング社長は「マイクロエレクトロニクスは未来であり、ボッシュの全事業分野にとって決定的な成功要因だ」と明言した。
独南西部のロイトリンゲンと東部のドレスデンにそれぞれ新たな開発センターを設置する。投資額は計1億7,000万ユーロ強。ドレスデン工場には来年、2億5,000万ユーロを投じ、クリーンルーム面積を3,000平方メートル拡大する計画だ。
ロイトリンゲン工場には25年までに約4億ユーロを投資。生産能力を拡張するほか、クリーンルーム面積を現在の3万5,000平方メートルから4万4,000平方メートル強へと引き上げる。
マレーシアのペナン工場には検査センターを建設し、23年から半導体チップとセンサーの検査を行う。
技術革新にも注力する意向だ。ハルトゥング社長は一例として、1枚の半導体チップ上に様々な機能を集積したSoC(システム・オン・チップ)を挙げた。自動運転車などに搭載されるレーダーセンサーの小型・スマート・低コスト化につながるとしている。
消費財産業向けには、機械要素部品、センサー、アクチュエーター、電子回路を1つのシリコン基板などの上に集積化したMEMS(微小電子機械システム)の開発に取り組んでいることを明らかにした。300ミリウエハーを使用したMEMSセンサーを26年から生産する計画だ。
パワーエレクトロニクスの効率・低コスト化に向け、窒化ガリウムを用いた半導体の開発も検討している。電動車への搭載を念頭に置いており、最大1,200ボルトの高電圧に耐えられなければならないとしている。
EUの欧州委員会は2月、域内の半導体研究開発や生産を推進するための「欧州半導体法案」を発表した。30年までに官民で430億ユーロを投じ、開発拠点や生産設備の増強を後押しするほか、有力メーカーの誘致にも力を入れ、東アジアなど域外への依存度を下げて安定供給を確保する。世界の半導体生産に占めるEUのシェアを現在の約10%から30年に20%以上に引き上げる目標。ボッシュは補助金を活用して半導体事業を強化する意向だ。