エネルギー確保の追加策を政府が表明、備蓄強化や廊下などでの暖房禁 止など

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相は21日、エネルギー供給を安定化するための追加措置を発表した。ロシア政府が欧州向けの天然ガス供給を政治的な思惑から恣意的に減らしたる停止する懸念が強まっていることを受けた措置。ドイツはロシア産ガスへの依存度が高いことから、新たな対策を導入する必要が出てきた。

ロシアはバルト海経由のガス管「ノルドストリーム1(NS1)」の供給量を6月中旬に容量の40%へと引き下げた。今月11日にはメンテナンスを理由に輸送を全面停止。21日に再開したものの、供給量はメンテナンス前と同じ40%にとどまっている。

ロシアは修理のためにカナダに輸送されたタービンが返却されないため、フル稼働できないと主張している。これに対し独政府は、予備のタービンを用いればフル稼働できるとみており、供給量の削減には政治的な意図があると批判。ハーベック氏は「(ロシアの)プーチン(大統領)の狙いは価格を吊り上げ、社会を分断し、ウクライナ支援を弱めることにある」と言い切った。

ロシアは今後も天然ガスを武器に揺さぶりをかけると予想されることから、独政府は同国産の供給が途絶えても冬を乗り切れる体制を構築する意向だ。そのための措置として今回、新たな国内ガス備蓄基準、天然ガス発電の抑制策、ガス消費量の削減策を打ち出した。

天然ガス備蓄制度はロシアのウクライナ進攻を受けて導入された。現行法では貯蔵施設に対し暖房シーズンが始まる10月1日時点で毎年、容量の80%以上、11月1日時点で90%以上の貯蔵が義務付けられている。政府はこれを強化し、10月1日時点で85%、11月1日時点で95%へと引き上げる。また新たに、9月1日時点で75%の確保を義務付ける。

天然ガス発電の抑制に向けてはすでに石炭発電の一時的な利用拡大を決めた。今回はさらに、予備電源となっている褐炭発電所を10月1日から再利用する方針を打ち出した。褐炭は環境負荷が高いものの、政府は国内のエネルギー供給を確保するためあえて活用する意向だ。

公共機関や企業に対しては廊下や玄関、ホールなど利用頻度の低い空間で暖房を原則的に使用しないことを6カ月間、義務付ける。一般世帯に対しても使用しない部屋で暖房を使わないよう要請する。また、カビの発生を防ぐために室温を一定水準以上に保つことを義務付ける賃貸住宅契約の条項に関しては適用を一時的に除外する。

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