VWとメルセデスがカナダと基本合意、持続可能な車載電池原料確保に向け

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)とメルセデスベンツは23日、カナダ政府と電動車分野で協業することでそれぞれ基本合意した。車載電池原料の確保が最大の狙い。独オーラフ・ショルツ首相のカナダ訪問に合わせトロントで覚書に調印した。

カナダは鉱山大国で、車載電池セルの主要原料であるコバルト、リチウム、ニッケル、黒鉛、銅資源が豊富だ。再生可能エネルギー発電量も多い。また、G7加盟の先進国で、採掘に際し人権・環境への配慮がなされていることから、製品の持続可能性が重視される現在、電池材料を同国で調達する意義は大きい。

VWとメルセデスは電気自動車(BEV)の生産・販売を今後、大幅に引き上げていく計画のため、電池生産に必要な材料を同国で確保する。

メルセデスはカナダ政府と、技術開発から原料獲得、生産、リサイクルに渡る自動車のバリューチェーン全体で協業する。この枠組みで独カナダ系の資源スタートアップ企業ロック・テック・リチウムから、リチウムイオン電池の正極材材料である水酸化リチウムを調達する方向だ。2026年から年に最大1万トンの供給を受ける。

VWは30年までにBEVを25モデル以上、北米市場に投入する。カーボンフットプリント(製品ライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの総量)をできるだけ少なくするため、同地にギガファクトリーを設置するとともに、電池材料のバリューチェーンを構築する。鉱物資源が豊富なカナダは原料の採掘から加工で大きな役割を果たす見通し。

トーマス・シュマル取締役(技術・電池担当)は経済紙『ハンデルスブラット』に、電池事業を統括する新設の子会社パワーコが鉱山や鉱山会社に出資し、産出量の20~30%を固定価格で長期調達する構想を明らかにした。