ドイツ政府は24日の閣議で、国内のエネルギー消費量を引き下げるための政令案を了承した。ロシアからの天然ガス供給が大幅に減り国内の安定供給が危ぶまれることから、需要が大きく増える冬季にそうした事態が起こらないようにする狙い。官庁、企業、市民がそれぞれ天然ガスと電力の消費量を減らすことを要請ないし義務付けられる。
欧州連合(EU)加盟国は今月上旬、ロシアからの天然ガス供給がさらに減少、または途絶した場合に備え、各国が2023年春までのガス消費を15%削減する目標を定めた規則案を採択した。ドイツはロシア産ガスへの依存度が特に高いことから20%の消費削減を目指している。今回の政令案を通しては2%の削減を見込む。
政令案は短期的な措置を定めたものと、中期的な措置を定めたものの2本からなる。短期的な政令は9月1日に発効し、2月末までの6カ月間、施行される。中期的な政令案は州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)の承認を経て10月1日に発効。24年9月末までの2年間、施行される。
短期的な政令では官庁に省エネを率先する役割が与えられており、役所の室温は19度が上限となる。これまでは20度を最低許容温度としてきた。廊下や玄関、ホールなど利用頻度の低い空間では原則的に暖房を使用しない。
民間企業では室温の許容下限が1度、引き下げられる。肉体労働を伴わないデスクワークでは20度から19度に下がることになる。暖房を利用中の小売店がドアを開けっぱなしにすることは禁止される。
広告に照明を用いることができるのは原則的に16~22時の6時間に制限される。記念碑や建物をスポットライトで照明することも原則禁止となる。
カビの発生を防ぐために室温を一定水準以上に保つことを義務付ける賃貸住宅契約の条項は凍結される。
天然ガスだけでなく電力の使用も制限するのは、ガス発電を可能な限り減らすため。
中期的な政令案では、ガス暖房を使用する全建造物の所有者に暖房の点検を受け、必要に応じて効率を改善することを義務付ける。
天然ガスベースのセントラルヒーティングを使用する大きな建物の所有者は暖房システムの圧力を均等化してエネルギー効率を最適化する「温水バランシング」の実施を義務付けられる(すでに実施した建物を除く)。面積1,000平方メートル以上の建造物(企業と官庁)と6世帯以上の集合住宅が対象となる。
エネルギー消費量が年10ギガワット時(GWh)以上の企業はエネルギー効率の向上措置を義務付けられる。経済省は照明をLEDに切り替えることや勤務プロセスの最適化、効率の悪い暖房の交換などを具体例として挙げている。