VW次世代BEV工場の建設に黄信号、OS開発の遅れで

自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)がヴォルフスブルク本社工場の隣接地で計画している新工場の建設に黄信号が灯りだした。同社独自の車載OS開発が遅れているためだ。同OSは新工場で生産予定の次世代電気自動車(BEV)の第1弾「トリニティ」に搭載される計画のため、OS開発遅延のしわ寄せは工場建設計画にも及ぶことになる。経営陣が従業員に宛てた文書や社内情報をもとに各種メディアが17日、報じた。

VWは3月、ヴォルフスブルク市ヴァルメナウ地区に新工場を建設する計画を明らかにした。投資額は約20億ユーロ。2023年春に着工し、26年からトリニティを生産することになっている。

トリニティは通信機能を通して交通・事故情報などを恒常的に相互交換するコネクテッドBEV。充電時間の大幅短縮と700キロメートル以上の航続距離を想定している。「レベル4」の自動運転車とする意向だ。製品ライフサイクル全体を通して二酸化炭素(CO2)の排出を実質回避する気候中立も実現する。BEV用の次世代車台「SSP(スケーラブル・システム・プラットホーム)」を採用する初の量産車となる。

ただ、搭載予定のOSが開発されなければ、トリニティを開発・生産できないことから、ヴァルメナウ工場建設プロジェクトの時程表に狂いが生じることになる。オリファー・ブルーメ社長は社員宛ての文書で「(VWグループの)すべてのプロジェクトと投資を熟視し、実行可能性を検証する機会を利用している」ことを明らかにした。トリニティに搭載予定のシステムも対象となっている。経済誌『マネージャー・マガチィン』によると、同氏は側近にヴァルメナウ工場は恐らく建設されないだろうと語ったという。

車載OSの開発遅延はVWが抱える大きな問題で、ヘルベルト・ディース前社長の実質的な解任の一因となった。同OSが開発されなければ、トリニティだけでなく他の次世代BEVも開発・生産できなくなる。トリニティの生産開始時期は20年代末にずれ込むとの情報がある。

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