ウルフスピードとZFが独にSiC半導体工場、国は費用の25%以上を支 援か

半導体大手の米ウルフスピードと自動車部品大手の独ZFフリードリヒスハーフェンは1日、西南ドイツのエンスドルフで記者会見を開き、同地に研究開発センターと工場を合弁で建設する計画を明らかにした。SiC(炭化ケイ素)半導体を自動車や再生可能エネルギー、産業向けに開発・製造する。記者会見には独ショルツ首相とハーベック経済相がそろって出席しており、半導体産業の強化に向けた政府の熱意が感じられる。欧州連合(EU)の「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで補助金を受けることが決まれば、両社は工場を建設する。

両社は200ミリウエハーSiC半導体分野で世界最大の工場を建設する。生産能力や投資額は明らかにされていない。経営権はウルフスピードが握る。ZFは億(ユーロ)のケタ台の資金を拠出し、その見返りにウルフスピードの普通株を取得する。

『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、工場と研究開発センターの投資額は計20億~30億ユーロに達するもようだ。そのうちの25%以上を国の補助金で賄う計画。地元ザールラント州も用地提供の形で支援を行う。

両社は2019年、SiCインバーター搭載電動パワートレインの開発に向け戦略パートナーシップを締結した。新たにSiC半導体の研究開発と製造で協業することで、協力関係を高い次元へと引き上げる。

SiC半導体はシリコン (Si) と炭素 (C) で作られる化合物半導体。従来のシリコン半導体に比べ電力消費量と発熱によるエネルギー損失が少ないことから、電動車の走行距離拡大や充電時間の短縮につながる。需要は今後、大幅に拡大すると見込まれている。

EUは世界の半導体生産に占める同地のシェアを30年までに現在の10%から20%以上に引き上げる目標を掲げている。その実現に向け官民で430億ユーロを投じ、開発拠点や生産設備の増強を後押し。有力メーカーの誘致にも力を入れ、東アジアなど域外への依存度を下げて安定供給を確保する考えだ。ショルツ氏は「ウルフスピードとZFの最先端半導体工場は独・欧州製造業の安定供給に大きく貢献する」と意義を強調した。

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