ドイツの首都ベルリン州で12日に実施されたやり直し州議会選挙で、州与党の左派3党は得票率がそろって低下した。中道右派の最大野党キリスト教民主同盟(CDU)は得票率を2021年9月の前回選挙から大幅に拡大。22年ぶりに第1党へと返り咲いた。CDUのカイ・ヴェーゲナー州首相候補は連立政権樹立に意欲を示している。ただ、与党3党は過半数議席を維持しているうえ、政権継続に前向きな姿勢を示していることから、政権交代の可能性は低いとみられる。
前回選挙では本来の投票時間内に投票が終了しないほか、投票用紙をコピーで代替するなど規則違反が多数、発生した。これを受け同州の憲法裁判所は22年11月、同選挙を無効とする判決を下し、やり直しを命じていた。ドイツで州議選が全面的に仕切り直しとなったのは初めて。
今回の選挙では前回不振だったCDUが10.2ポイント増の28.2%と躍進した。極右ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も1.1ポイント増えて12.2%となった。与党3党は社会民主党(SPD)が3.0ポイント減の18.4%、緑の党が0.5ポイント減の18.4%、左翼党が1.9%減の12.2%。小さな政府を重視する中道右派の野党・自由民主党(FDP)は2.5%減の4.6%となり、議席獲得に必要な5%を割り込んだ。
各党の獲得議席数はCDUが52、SPDと緑の党がそれぞれ34、左翼党が22、AfDが17。総議席数は159で、現与党3党(計90)は過半数ライン(80)を大きく上回っている。
ドイツでは最も得票率の高い政党が次期政権樹立に向けた協議を優先的に行う慣行がある。第1党となったCDUはSPDないし緑の党と連立を組む意向で、両党とそれぞれ予備交渉を行う意向だ。SPDと緑の党は予備交渉に応じる意向を示している。
ただ両党とも、左翼党を含めたこれまでの政権を継続したい考えで、CDUが政権を獲得するのは容易でない。緑の党のベッティーナ・ヤラシュ首相候補は公共放送RBBラジオに、CDUとの連立はCDUが政策面で大幅に譲歩する場合に限られると明言した。市中心部での内燃機関車の走行を30年から全面禁止するなど、緑の党が掲げる重点政策の受け入れを求めるもようだ。
現政権を維持する場合はSPDがこれまでに引き続き政権を率いる見通し。緑の党とSPDは得票率が18.4%で並んだものの、得票数ではSPDが105票多いためだ。ただ、僅差であることから、選挙管理委員長は再集計を行う意向を表明しており、緑の党が逆転する可能性も排除できない。
SPDのフランツィスカ・ギッファイ首相に関しては選挙の敗北を受けて引責辞任を求める声が党内から出ている。SPD主導の内閣が成立しても、首相が同党の別の人物に代わる可能性がある。