SAPのクラウドプロジェクト、欧州委による助成承認前にスタート

ドイツ連邦経済省は24日、「次世代のクラウドインフラとサービスに関わる欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI-CIS)」の枠組みでソフトウエア大手のSAPが主導するプロジェクトの早期スタートを承認したと発表した。IPCEIのプロジェクトは欧州連合(EU)・欧州委員会の承認を受けなければ補助金交付を受けられないが、経済省は同委の承認を待たずにゴーサインを出した。ロベルト・ハーベック経済相は「我々は強靭な欧州クラウドインフラを必要としている。このため、ここではスピードが重要だ。というのも国際競争は眠ることなく行われているためだ」と意図を説明した。

クラウドサービス市場ではアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とマイクロソフトが2強で、これをグーグル、アリババが追っている。中国企業のアリババを除いて米IT大手が圧倒的に優勢だ。これらの企業は工場のネットワーク化(産業IoT)に伴うデータの保存や人工知能(AI)利用など様々なサービスを低価格で提供しており、欧州勢は太刀打ちできない。

EUはこうした現状に危機感を持っていることから、IPCEI-CISを通して欧州のクラウド競争力を引き上げ、米企業への依存を軽減する狙いだ。分散型・集中型を問わず様々な企業が持つデータ処理能力を共通の技術ベースの上で統合。ユーザー企業が特定のクラウド事業者に依存することなくリアルタイムでデータを処理できるようにし、画期的なデジタル事業モデルを構築できるようにする。

SAPはEU加盟国の他のパートナーとともに、様々なリファレンス・アーキテクチャーと、相互利用が可能な欧州クラウドインフラのためのインターフェイスを含むソフトウエアコンポーネントを開発する。IPCEI-CISの中心的なプロジェクトの1つとなる。

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