ダイムラー・トラックとトヨタが協業、三菱ふそうと日野を統合へ

商用車大手の独ダイムラー・トラックは30日、トヨタ自動車と協業することで基本合意した。それぞれの子会社である三菱ふそうと日野自動車の経営を統合。CASE技術に対応したグローバルな競争力を持つ商用車メーカーを構築するとともに、苦戦する東南アジア事業を強化する。

持ち株会社を設立して三菱ふそうと日野を対等な立場で統合する。開発、調達、生産分野で協業。規模の効果でCASE(「コネクテッド」「自動運転」「シェアリングとサービス」「電動化」)技術開発などを加速する。共同声明ではCASE化には多大な投資を要すると指摘したうえで、「商用車は乗用車に比べて台数も少なく、日本市場で商用車メーカー各社が単独で対応するのは大変難しい」と背景を説明している。

新会社は株式を公開する予定で、ダイムラー・トラックとトヨタは同一の割合を保有する計画。社名や所在地、協業の範囲は今後、協議していく。2024年3月までに最終契約を締結し、同年末までに取引を完了させる意向だ。

ダイムラー・トラックのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)は、新会社が「東南アジアで大きな力を発揮」することに期待感を表明した。東南アジア事業は昨年、販売と売り上げが伸びたにもかかわらず、営業利益が60%落ち込んだ。競争が厳しいことが背景にあり、今年も改善のメドが立っていない。三菱ふそうを日野と統合することで、改善を図る意向だ。

ダイムラー・トラックの主力ブランド「メルセデスベンツ」は大型トラックを中心とするラインナップとなっている。一方、三菱ふそうと日野は小型トラックに強いことから、シナジー効果は大きいと目される。

ダイムラー・トラックとトヨタはともに燃料電池車に注力している。昨年5月にはトヨタがダイムラー・トラックのバス子会社ダイムラー・バスに燃料電池モジュールを供給すると発表した。ダイムラーの電気バス(BEV)「eシターロ」のレンジエクステンダー向けに出力60キロワット(kW)のモジュール「TFCM2-F-60」を提供。車両への同モジュール統合も支援する。

ダイムラー・トラックはスウェーデン同業のボルボとも燃料電池の開発で協業している。同協業をベースに20年代後半から燃料電池トラックを量産する計画だ。トヨタとの協業がボルボとの協業に影響するかどうかは定かでない。

一方、日野は独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門トレイトンと調達および電動パワートレインの開発で戦略協業してきた。三菱ふそうとの経営統合はトレイトンとの関係の見直しにつながる可能性がある。