通信インフラからの中国製品排除をNATOが要求

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は9日ベルリンで開催されサイバー防衛会議で、通信インフラから中国製品を排除することを加盟国に要求した。名指しはしなかったものの、特にドイツを念頭に置いた発言と目されている。

ストルテンベルグ氏はロシア産化石燃料に欧州が強く依存してきたことが現在のエネルギー危機につながったことを指摘したうえで、「重要な通信網用の技術で中国に依存することで、この過ちを繰り返してはならない」と強調した。

『ハンデルスブラット(HB)』紙は、これをドイツ政府に宛てたメッセージだと指摘するとともに、「NATOが時事的な内政論議に介入するのは極めて異例だ」と報じた。ドイツの通信事業者が現在も華為技術(ファーウェイ)の製品を用いて5G通信網を構築しているうえ、ドイツ政府がこれを制限・禁止していないことにNATO本部内でフラストレーションが溜まっていることが背景にあるという。

ドイツの5Gインフラに占める中国製品の割合は推定50~60%に上る。欧州で最も高いとされる。中国との関係が仮に今後、大幅に悪化した場合、代替部品の供給を停止されたり、製品に組み込まれた「バックドア」と呼ばれる不正侵入用の入口を通してスパイ活動や破壊工作が行われる恐れがあることから、内務省は通信インフラでの使用を大幅に制限する方向で準備を進めている。

具体的には、5Gインフラに占める中国製品の割合を3年以内に25%以下に引き下げることを通信サービス各社に義務付ける。また、基地局、アンテナであってもベルリンやボン(元首都で現在も国の官庁が多い)などの重要都市については中国製品の使用を全面禁止する。

3年という期限は部品のライフサイクルを踏まえたもの。部品の除去で発生するコストを通信各社が可能な限り抑制できるよう配慮している。

外務省と経済省は内務省の方針を支持している。だが、交通省が反対していることから、政府は方針を打ち出せないでいる。通信各社のコスト負担に対する懸念のほか、安全保障面でのリスク評価の違いが背景にあるもようだ。

ショルツ首相は中国製品を使用し続けることのリスクを認識しているが、政府の政策調整は足踏み状態が続いているという。

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