治験の許可手続きを簡素・短期化、医薬立地強化に向け法案準備

ドイツ連邦保健省は1日、医薬品研究法の原案を発表した。治験許可手続きを簡素・短縮化することで、国内での研究開発を促進するというもの。8月に閣議決定した医療制度デジタル化加速法案(デジタル法案)、医療データ活用法案との相乗効果で医薬品の産業立地競争力を高める狙いだ。カール・ラウターバッハ保健相は、「わが国は基礎研究の分野では極めて良好なものの、これに続く特許と生産は少ない」と述べ、医薬品の特許件数と国内生産で先を行く米英の追撃に意欲を示した。

煩雑な治験許可手続きがドイツの治験競争力を弱めている。保健省はこれを改善するため、連邦医薬品・医療機器審査局(BfArM)を治験申請の窓口とすることにした。BfArMが手続きの調整・管理を引き受けることから、製薬会社の手間暇は大幅に省かれる。許可手続きは25日以内に完了する。

治験を実施するために製薬会社と病院が結ぶ契約の交渉が長期化することもネットとなっている。そうした事態を回避できるよう標準契約の活用を促進する。

デジタル法案は公的健康保険の被保険者を対象に電子カルテを作成するというもの。電子カルテには病歴や治療歴、処方歴、診断結果、画像データ、検査の数値など被保険者各人の健康データがすべて記録される。

医療データ活用法案は電子カルテに記録された情報と、健康保険組合の決済データ、がんデータバンクのデータを医薬品や治療法の開発、研究のために利用しやすくする目的で作成された。プライバシーを保護するため、データはすべて匿名化される。製薬会社はこれらの膨大なデータを利用できることから、新薬の研究開発がドイツで活発化する効果が期待されている。

研究開発環境の改善には国内生産を増やす狙いもある。ラウターバッハ氏は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙のインタビューで、「(医薬品の)生産は研究の基本状況が良好な場所で行われることが多い」と述べた。照準を定め補助金などで工場を誘致することも視野に入れている。

研究開発型製薬工業会(VfA)のハン・シュトイテル会長は「方向性は正しい」と述べ、医薬品研究法原案に歓迎の意を示した。治験の標準契約については、それが存在することを単に示すのではなく、使用を義務付けるべきだと述べ、修正を促した。

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