リザーブ火力電源を国が助成、再生エネ比率の拡大を見据え

ドイツ政府は5日、柔軟性が高く環境に優しい火力発電の助成策をめぐりショルツ首
相(社会民主党=SPD)とハーベック経済・気候相(緑の党)、リントナー財務相
(自由民主党=FDP)が大筋合意したと発表した。水素利用が可能な天然ガス火力発
電に補助金を交付。再生可能エネルギー電力の比率が今後一段と高まっても、電力を
安定供給できる体制を構築する。
同国では原子力発電が2023年4月に全廃された。二酸化炭素(CO2)排出量が特に多い
電源である石炭火力発電についても早ければ30年、遅くとも38年に全廃となる予定
だ。
再生エネ電力は発電量が天候に大きく左右されることから、同電源からの供給不足時
には在来型発電を利用する必要がある。原発と石炭火力を廃止するドイツでは当面、
天然ガスをリザーブ電源とすることになるが、石炭に比べ少ないとはいえCO2は排出
されることから、将来的にはグリーンないしブルー水素に切り替えていく必要があ
る。
政府はこの事情を踏まえ、水素利用が可能な天然ガス発電所を支援する。具体的には
容量2.5ギガワット(GW)の発電所4カ所(計10GW)の建設と運営に20年間で総額160
億ユーロの助成を行う。
天然ガスから水素への全面的な燃料転換の時期については35〜40年の想定している。
具体的な時期の決定は32年に下す。
リザーブ電源は再生エネの供給が不足する時にしか利用されないことから、採算が取
れないリスクがある。政府はこの問題を解決するため、「キャパシティ市場」という
メカニズムを導入する。これは発電だけでなく待機に対しても対価が支払われるとい
うもので、政府は制度設計を今夏までに具体化する意向だ。
リザーブ電源の支援財源は国の気候・トランスフォーメーション基金(KTF)から拠
出する。
ドイツが必要とするリザーブ電源の規模は助成対象の10GWを大幅に上回るとの指摘が
ある。ハーベック氏も昨年までは25GWの助成方針を表明していたが、KTFの財源に対
し11月に違憲判決が下されたことから、政府は大幅縮小を余儀なくされた格好だ。経
済界からは将来の電力不足への懸念が出ており、独商工会議所連合会(DIHK)のアッ
ヒム・デルクス専務理事は、既存の火力発電所の廃止時期を必要があれば先送りする
よう政府に促した。