中国の関税引き上げ示唆を独自動車業界が懸念

乗用車の輸入関税引き上げ方針を中国が示唆していることに、ドイツの自動車業界が
警戒感を示している。独メーカーが強い大型内燃機関車を対象とする意向が示されて
いるためだ。中国製電動車の輸入急増を欧州連合(EU)と米国が関税引き上げで阻止
しようとしていることへの対抗措置ないし警告とみられる。独自動車工業会(VDA)
の広報担当者は「貿易紛争の激化はドイツの自動車産業に特に大きな打撃をもたら
す」と懸念を表明した。24日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。
在欧州連合(EU)中国商業会議所(CCCEU)は21日、中国が大型内燃機関車の輸入関
税を最大25%に引き上げる検討をしているとX(旧ツイッター)に投稿。中国国務院
国有資産管理委員会の傘下機関である中国自動車技術研究センター(CATARC)の劉斌
(リウ・ビン)氏も中国共産党系の『環球時報』に、排気量2.5リットル以上の輸入
車関税を25%に引き上げるべきだと述べた。世界貿易機関(WTO)のルールに合致し
ているうえ、気候保護にも寄与するとしている。欧州からの輸入車では税率が10ポイ
ント上昇する。
独自動車メーカーは中国での生産比率が高いものの、現地生産するのは主に大衆車
で、排気量が大きい高級車とスポーツ車はドイツから輸出。SUVも米国から輸出して
いる。このため中国が輸入関税引き上げに踏み切れば、メルセデス、BMW、アウ
ディ、ポルシェは大きな痛手を受ける見通しだ。トヨタ自動車も高級ブランドのレク
サスが直撃を受ける。一方、中国・浙江吉利の子会社であるスウェーデンのボルボ・
カーは排気量2リットルのモデルしか中国に輸出していないことから、影響を受けな
い。
米バイデン政権は今月中旬、中国製電動車の関税を現在の25%から100%に引き上げ
る方針を表明した。欧州連合(EU)の欧州委員会も中国製電動車への反補助金調査を
昨年10月から進めている。期間は最長13カ月間。途中で不当な公的支援があるという
確証を得た場合は、今夏にも暫定的な相殺関税を課すことができる。
欧州委の同調査はフランス政府の圧力を受けて開始されたもようだ。仏自動車メー
カーは欧州市場を主戦場とし中国市場で存在感がないことから、相殺関税のメリット
が大きく、中国の報復関税の影響もほとんど受けない。
一方、独自動車業界は同調査に当初から懸念を示していた。VDAは24日、EUが必要と
するのは技術革新や規制の削減、自由貿易協定網の拡充などを通した経済立地・産業
競争力の強化だと指摘。保護主義に反対の立場を表明した。

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