ドイツが仮に欧州連合(EU)から離脱すると、実質国内総生産(GDP)が当初の数年
間は年10%縮小し、長期的にも年5%押し下げられる――。金属・電機雇用者団体系
のシンクタンク「新社会的市場経済イニシアチブ(INSM)は27日に公表した調査レ
ポートでそんな結論を明らかにした。同国では有権者の支持率を急速に高めた極右政
党「ドイツのための選択肢(AfD)」がEU離脱を辞さない構えを見せていることか
ら、多くの経済団体が警戒感を表明。財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所も先
ごろ発表した調査レポートでINSMと同様の見解を示した。
AfDはEUの改革は不可能だとして、「欧州諸国連合」という国家連合の創設方針をマ
ニフェストで打ち出している。英国のブレグジットに倣ったドイツのEU離脱(デク
ジット)の可能性を排除していない。
INSMはこれに危機感を持ち、デクジットの経済的な影響に関する調査をオーストリア
経済研究所(WIFO)に委託。そのレポートを公開した。
それによると、EUを離脱した場合、ドイツの年GDPは長期的にみて最低1,370億ユー
ロ、最大2,760億ユーロ縮小する。中間的シナリオでは縮小幅が2,000億ユーロ強で、
5%に相当する。住民1人当たりでは約2,430ユーロの損失となる。
経済の大幅後退が避けられないのは◇EU加盟国向けの輸出が大きく落ち込む◇その穴
を第三国との通商で相殺することはできない――ためだ。INSMのトルステン・アルス
レーベン事務長は「EUの無駄遣い、非効率性、官僚主義を批判することはできる。だ
が、EUのメリットをドイツほど享受している国はないことが今、(WIFOの調査で)科
学的に証明された」と指摘。「デクジットは奈落への入り口だ」と明言した。
WIFOによると、ドイツのGDPはEU域内市場の効果で3.7%、シェンゲン協定による移動
の自由で1%、欧州通貨統合の効果で0.7%押し上げられている。また、EUが第三国と
結ぶ自由貿易協定もプラス要因となっている。EUへの拠出金支払いでGDPは0.2%押し
下げられるものの、GDPの差し引き約5%はEU加盟によって生み出されている。
EUから離脱すると、製造業の粗付加価値は実質ベースで年6.8%減少する。減少幅が
最も大きい業界は石炭・石油製品で18.0%に上る。化学(同13.4%)、繊維・衣料
品・革製品(9.7%)、食品・飲料・たばこ(9.6%)、プラスチック(9.1%)、金
属(8.9%)もしわ寄せが大きい。自動車は6.1%、機械は5.8%、製薬は3.7%、電
子・光学は2.9%と平均を下回るものの、影響は受ける。
ドイツは欧州最大の経済規模を持つ。このためデクジットが仮に現実になった場合、
EUは崩壊するとWIFOはみている。