廃電池をレーザーでリサイクル、トルンプが新技術を開発

工作機械大手の独トルンプは12日、レーザー技術を用いた使用済み車載電池のリサ
イクル技術を開発したと発表した。従来のリサイクル技術に比べ手間暇がかからず
経済性が高いことから、リチウムイオン電池のリサイクルに弾みが付きそうだ。18
〜20日にシュツットガルトが開催される電池技術見本市「バッテリー・ショー・
ヨーロッパ2024」で世界初公開する。
従来のリサイクル技術では、人の手で解体した廃電池を機械的に粉砕しブラックマ
ス(黒い粉末)を取り出したうえで、湿式製錬処理を実施。電池原料のリチウム、
ニッケル、コバルト、マンガンを取り出す。
トルンプは廃電池の解体と原料の取り出しをともにレーザーシステムを用いて行う
独自技術を開発した。解体作業は自動化されることから、時間とコストを低減でき
るほか、作業員が怪我をするリスクがなくなる。
同社はこれまで、パイロット設備を用いて世界の主要な自動車、電池メーカーと共
同で開発に取り組んできた。技術は完成したもようで、「自動車、電池メーカーは
トルンプのレーザー技術を用いることで、使用済みないし欠陥のある電動車用電池
を初めて産業スケールでリサイクルできるようになった」としている。
欧州連合(EU)では2023年8月、域内で販売されるあらゆる電池の回収、再利用、
リサイクルを推進するための「電池規則」が施行された。電動車などに使用される
軽輸送手段(LMT)用電池に関しては、28年末までに51%、31年末までに61%の回
収が求められる。
原材料の再資源化率については、リチウムの目標値を27年末までに50%、31年末ま
でに80%と設定。コバルト、銅、鉛、ニッケルについては27年末までに90%、31年
末までに95%の目標を掲げている。
リサイクル済み原材料の含有率に関しても、31年8月までの目標をコバルト16%、
鉛85%、リチウムとニッケルはそれぞれ6%に設定。36年8月までの目標はコバルト
26%、鉛85%、リチウム12%、ニッケル15%となっている。
フラウンホーファー生産技術・オートメー ション研究所(IPA)のアレクサン
ダー・ザウアー所長によると、EU規制などを背景に「製造業では30年以降、欧州だ
けで年57万トンの電池材料をリサイクルしなければならなくなる」という。効率・
経済性の高いリサイクル技術のニーズが一段と高まる。

上部へスクロール