自動車部品大手のコンチネンタルは13日、整理対象となる自社社員の一部を軍需大
手のラインメタルが受け入れることで基本合意したと発表した。車両の電動化で余
剰人員が発生している車部品業界から、特需で人手不足が起きている軍需業界に就
労者が移動する格好となる。コンチネンタルの競合ボッシュなども同様の取り組み
を行っている。
電気自動車(BEV)は内燃機関車に比べ部品点数が少ないことから、部品業界では
BEVの販売が増えるにつれて必要とする就労者が減っていく。これを受け部品各社
はすでに事業拠点の統廃合や人員削減に乗り出している。
一方、軍需業界ではロシアのウクライナ侵略をきっかけに兵器需要がにわかに拡
大。ラインメタルの売上高は今年40%拡大する見通しだ。市場の成長に見合った生
産能力の整備が喫緊の課題となっている。
ドイツは他の先進国同様、少子高齢化が進展し、働き手が不足している。特に高い
技能を持つ就労者の不足は深刻度が高い。
こうした状況を背景に、優秀な人材を大量に確保したい軍需メーカーと、不要と
なった人材の再就職を支援したい車部品大手の思惑が一致。部品各社と軍需各社の
間で従業員の移籍に向けた協議が活発化している。
コンチネンタルでは整理対象となった拠点の従業員を対象に、ラインメタルへの転
職について説明会を開催する。2027年末までに閉鎖予定の独北部ギフホルン工場に
ついては、最大100人の従業員が約50キロ離れたウンターリュースにあるラインメ
タルの工場で勤務できる見通しという。従業員は転職に向け、社内のリスキリング
機関である「コンチネンタル技術・トランスフォーメーション機構(CITT)」で支
援を受けることができる。産業構造の転換に伴う失業を可能な限り回避するために
経済界が21年に立ち上げたイニシアチブ「チャンスのアライアンス」を通しても社
員の転職をサポートしていく。
ラインメタルはコンチネンタル以外の部品メーカーとも従業員の獲得に向けた協議
を行っている。経済紙『ハンデルスブラット』はボッシュ、ZFフリードリヒスハー
フェン、マーレが協議先だと報じた。
ZFの広報担当者は、ゲルゼンキルヒェン工場を今年末で閉鎖すると発表した後、有
名企業数社から熟練労働力の問い合わせがあることを明らかにした。同社の国内雇
用規模は今後、1万3,000人、縮小すると見込まれている。エンジン部品のマーレ
は、整理対象となる社員に再就職の見通しを示すことは重大案件だと回答した。
ボッシュはチャンスのアライアンスを通して転職支援を行っている。