蘭国有送電網運営会社テネットは20日、独子会社テネットTSOの完全売却に向け独政
策金融機関KfWと進めてきた交渉を打ち切ったと発表した。独政府が財政難を理由に
取引を実施できないと蘭政府に通告したことを受けた措置。テネットは今後、TSOか
らの資本撤退に向け他の可能性を模索していく。
テネットは独エネルギー大手エーオンの送電網を2010年に買収し、同国市場に参入し
た。TSOが持つ送電網は北海からオーストリア国境まで国土を縦断。国内送電4社のな
かでカバーエリアが最も大きい。
欧州では脱炭素化に向け、化石燃料の使用を縮小・廃止し、再生可能エネルギー電力
を増やす動きが加速している。電力需要の大幅拡大に対応するため、各社は送電網の
拡充に取り組まなければならない。
そのコストは巨額であることから、蘭政府とテネットはTSOをドイツに売却する方向
でKfWと交渉してきた。独政府が国内送電4社への出資に前向きなこともあり、交渉は
成立が確実視されていた。
だが、コロナ禍対策の起債枠をGX基金に転用した独政府の措置を違憲とする判決を連
邦憲法裁判所が昨年11月に下したことで買収資金確保のメドが立たなくなっており、
テネットはKfWとの交渉と並行して他の投資家への売却ないし新規株式公開(IPO)を
検討する意向を5月に表明していた。
独ロベルト・ハーベック経済・気候相は訪問先の韓国で同日、今回の交渉とん挫に遺
憾の意を示すとともに、国内送電網会社を統合し資本力を強化する考えに変わりはな
いと強調。「もう一度、正面から熟考しなければならない」と述べた。
政府はTSOへの出資自体を断念したわけではない。経済・気候省のフィリップ・ニン
マーマン事務次官はコンソーシアムの枠組みでマイノリティ出資を目指していると
語った。dpa通信によると、TSOの完全買収に反対してきた財務省内にも同様の意見が
あるという。
TSOが必要とする投資資金は当面、オランダ側が捻出する。