衛星打ち上げロケットの独スタートアップ企業イザール・エアロスペースは20日、シ
リーズCの資金調達ラウンドで総額2億2,000万ユーロ強を確保したと発表した。量産
に向け工場を建設する。既存の出資者に加え、北大西洋条約機構(NATO)の投資ファ
ンド「NATOイノベーション基金(NIF)」が新規の投資家として資本参加した。NIFが
衛星打ち上げ会社に出資するのは初めて。
同社はミュンヘン工科大学からのスピンオフとして2018年に設立された。全長27メー
トル、最大積載量1トンの小型ロケット「スペクトル」を建造する。衛星打ち上げで
先行する米イーロン・マスク氏のスペースXを手本としている。
創業からこれまでに投資家から調達した資金の総額は4億ユーロを超えた。今回確保
した資金ではミュンヘン郊外に量産工場を建設し、年産40台体制を整える。手頃な料
金で官民の衛星打ち上げ需要を掘り起こす狙いだ。
ダニエル・メッツラー社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に語ったところ
によると、スペクトルの初の打ち上げは順調に行けば今夏、遅くとも年末までに行わ
れる見通し。ノルウェーのアンドーヤ打ち上げ場を利用する。
NIFはドイツを含むNATO加盟24カ国が23年に設立した10億ユーロ規模の基金。安全保
障と防衛に照準を合わせ、人工知能(AI)、ロボット、航空宇宙などディープテック
の企業に投資を行う。
スペースXの通信衛星網がウクライナのインターネットを支えるなど、安全保障にお
ける宇宙空間の重要性は高まっている。メッツラー氏は「ここ2〜3年で欧州の主権性
が極めて重要であることが鮮明になった」と述べたうえで、イザール・エアロスペー
スは独立したサプライチェーンを構築し技術もすべて自社開発したと指摘。防衛とい
う観点からすると第三国に依存しないことは重要だとして、同社は欧州のレジリエン
ス強化に貢献できると見方を示した。