独連邦経済・気候省は11日、水素経済の立ち上げに向けて実施したグリーン水素製品
の第1回輸入入札でアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ国営石油会社(ADNOC)の尿
素・アンモニア製造子会社ファーティグローブ(Fertiglobe)が落札したと発表し
た。2027年から33年にかけて少なくとも25万9,000トンのグリーンアンモニアの供給
を受ける。
ドイツは45年までの炭素中立実現を目指している。エネルギーに関しては主に再生可
能エネルギー電力の拡大を中心に脱炭素化を進めるが、これまで石炭や天然ガスを使
用してきた鉄鋼・化学などエネルギー集約型産業の一部の生産工程では電力による置
き替えができないことから、グリーン水素が穴を埋めることになる。
政府の予測によると、国内の水素需要は30年に95〜130テラワット時(TWh)に達し、
その後、さらに拡大していく。ドイツはグリーン水素の生産に必要な太陽光・風力資
源が潤沢でないことから、需要の半分以上を輸入で賄う見通しだ。
ただ、グリーン水素は化石燃料に比べ価格が割高であるため、ユーザー企業は国の支
援がなければ製品競争力を維持できない。政府はこの事情を踏まえ、「二重オーク
ションモデル(Doppelauktionsmodell)」という助成の枠組みを導入する。これは水
素・誘導体の調達と販売でともに入札を実施するというものだ。
調達入札ではグリーン水素と、アンモニアなどの誘導体をそれぞれ1社から購入す
る。提示額が最も低い応札者が落札する。契約期間が長く設定されることから、落札
者は事業計画を立てやすくなり安定供給につながる。
販売入札では提示額が最も高い応札者が落札する。販売価格は調達価格を下回る見通
しのため、差額を国の補助金で埋め合わせる。
二重オークションは、グリーン水素の国際市場を立ち上げる目的で創設された独「H2
グローバル」の傘下企業Hintco(ハイドロジェン・インターミディアリィ・カンパ
ニー=水素仲介会社)を通じて行われる。
ファーティグローブはHintcoがこのほど実施した調達入札で落札に成功した。今後は
エジプトに容量273メガワット(MW)の太陽光、風力発電設備を設置し、その電力で
グリーン水素を生産。輸送しやすくするため、これを窒素と反応させアンモニアを合
成する。輸出されたアンモニアはドイツで再び水素に変換され、同国をはじめとする
欧州の需要家に供給される。
経済・気候省によると、ファーティグローブのグリーンアンモニア製造コストは1ト
ン当たり811ユーロに上る。これをもとに水素の製造コストを計算すると1キロ当たり
4.5ユーロ未満になるという。これは製造工程で大気中に二酸化炭素(CO2)が排出さ
れる天然ガスベースのグレー水素(同3〜4ユーロ)を上回るものの、想定していた額
を下回った。同省は「現在の推定および他の最初の入札結果に比べグリーン水素誘導
体としては低コストだ」との見方を示した。メディア報道によると、現時点ではグ
リーン水素の価格がキロ当たり4.4ユーロであれば競争力があるとみなされていると
いう。