自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は27日、同社と現地提携先の上海汽車
(SAIC)が新疆ウイグル自治区で共同運営する工場とテストコースを上海政府傘下
の上海汽車車両検査認証(SMVIC)に譲渡することで合意したと発表した。経済的
な不採算性を理由としているものの、同工場・テストコースを巡っては中国政府に
よるウイグル人弾圧に加担しているとの批判があり、国際世論や市場の圧力に抗し
きれなくなったというのが実情だ。取引金額は明らかにしていない。
VWは2012年、SAICと共同で新疆ウイグル自治区の首府ウルムチに合弁工場を建設す
る契約を締結した。中国政府の西部大開発政策を受けたもので、13年に操業を開始
した。だが、経済発展が遅れた同地では需要が少なく、従業員数はピーク時の650
人から200人に減少していた。業績の上から判断すれば、工場を存続させる理由は
そもそもなかったが、中国政府への配慮から赤字経営を続けていた。VWの業績が
最近、急速に悪化していることから、売却という中国側のメンツを立てる形で撤退
を実現した。
VWとSAICは同自治区のトルファンでテストコースも共同運営してきた。同コース
を巡っては、建設に際しウイグル人の強制労働が行われていたとの疑惑が今年2月
の報道で浮上。VWは報道内容を深刻に受け止めているとしたうえで、同コースの
今後についてSAICと協議を開始したことを明らかにしていた。
両社は今回、合弁契約を40年まで10年間、延長することでも合意した。30年以降の
事業計画を立てられるようにする狙いがある。