EUグリーンディールの見直しをルフトハンザが要求

脱炭素と経済成長の両立を目指す欧州連合(EU)の「グリーンディール」政策を批判
する決議を、独航空大手ルフトハンザの監査役会が全会一致で採択し、欧州委員会の
ウルズラ・フォンデアライエン委員長と独オーラフ・ショルツ首相に送付した。同決
議を入手した『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が10日付で報じたもので、政策
の見直しを要求している。
同決議は、気候保護は重要だとしてグリーンディールの目標への支持を表明したうえ
で、持続可能な経済の実現を可能にする枠組み条件を創設するのは政治の義務だと指
摘。「欧州とドイツの政治はこの義務をますます果たさなくなっている」と批判し
た。
その一例として、EU域内の空港で使用する航空燃料へのSAF(持続可能な航空燃料)
混合を2025年から義務付ける法律を挙げた。混合比率は当初が2%。その後は5年おき
に引き上げられていき、50年には70%に達する。SAFは石油由来の燃料に比べ割高で
あるため、航空会社の負担は増えることになる。
ルフトハンザが問題視しているのは、EU域内に拠点を置く航空会社は域外の競合に比
べ競争上、不利になるという点だ。例えば、ルフトハンザの機材がドイツから日本に
向かう場合、全区間に渡ってEUのSAF混合比率を順守しなければならない。これに対
し中東やトルコの航空会社はEU〜自国間では同規制に従うものの、自国から日本への
乗り継ぎ便では従う義務がないことから、コスト面で有利になる。
監査役会の決議は、EUは域内の航空会社に不利な規制を作り上げていると批判。その
恩恵を受けているのは、EUのESG(環境・社会・ガバナンス)標準を満たさない域外
の航空会社だとして、政策の「明確な修正」を要求している。
監査役会が今回の決議を全会一致で採択したことは、資本側だけでなく、被用者側の
役員もグリーンディールの見直しを求めていることを意味する。

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