自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のドイツ工場買収に中国同業が関心を示して
いるとの観測が浮上している。中国製電気自動車(BEV)に対する欧州連合(EU)
の追加関税を回避するために同国自動車メーカーが欧州で模索する生産拠点確保に
向けた取り組みの一環という。ロイター通信が中国政府に近い関係者の情報として
16日付で報じた。
VWではドイツ国内の生産能力を73万4,000台削減することが12月中旬の労使協定で
取り決められた。工場閉鎖は行わないものの、ドレスデン工場では2025年末、オス
ナブリュック工場でも27年半ばに車両生産を停止し、代替用途を模索することに
なっている。オスナブリュック工場については売却先を模索するとの報道が以前か
らある。
同関係者は、「中国は工場を取得することで、最も歴史があり、最も権威のある自
動車ブランドの本拠地である、ドイツの自動車産業への影響力を構築することが可
能になる」と話した。VWはオスナブリュック工場を中国の買い手に売却することに
前向きだとしている。
一方、従業員代表の事業所委員会は『南ドイツ新聞(SZ)』の問い合わせに、
「フォルクスワーゲンで売りに出されている工場はない」と回答し、中国企業によ
る買収観測を明確に否定した。
同紙はまた、◇人権侵害や強権政治で悪いイメージが持たれている中国の企業への
独工場売却をVWの主要株主である地元ニーダーザクセン州政府が認めることは考え
にくい◇東欧や南東欧に比べ人件費が大幅に高いドイツで工場を獲得するメリット
はない——という事情を指摘。VWの独工場を中国メーカーが買収する可能性は低い
との見方を示した。
中国の電動車大手リープモーターは提携先ステランティスのポーランド工場で昨
年、自社モデルの生産を開始した。BYDは欧州工場をハンガリーに建設している。