欧州銀行監督機構(EBA)は12月21日、EU域内の銀行を対象とする賞与(ボーナス)規制の運用に関する最終指針を公表した。規制をより実効性のあるものにするため、適用範囲や固定報酬と変動報酬の定義などを明確化している。業界側からは規模の小さい銀行を規制の対象から除外するよう求める声が上がっていたが、条件を一部緩和したうえですべての銀行に規制が適用される。2017年1月から最終指針に沿って規制が運用される。
EUは銀行の短期業績に連動した高額報酬制度がトレーダーなどの過度なリスクテイクを助長し、金融危機を招く一因になったとの反省から、2014年1月にボーナス規制を導入した。域内に本社や現地法人を置くすべての銀行の取締役、上級管理職、トレーダーなどを対象に、ボーナスの支給額を原則として年間給与と同額に制限するという内容で、株主の承認がある場合は年間給与の最大2倍が上限となる。
しかし、実際には英国に拠点を置く大手行を中心に、人材流出を懸念する多くの銀行が幹部行員に対し、給与とは別に規制対象とならない定額報酬として「役職ベースの手当」を支給していることが判明。また、中小の銀行については多くのケースで規制の適用が見送られていることが明らかになった。このためEBAは今年3月に報酬規制の新たな運用ルールを提示し、意見募集を経て最終指針をまとめた。
大手行が導入している役職ベースの手当について、銀行側は職務や勤務年数などに基づく報酬はボーナスのような能力給とは異なるため、固定給に該当すると主張していたが、EBAは固定給を「永続的で予め決められた、取り消し不可能ですべての従業員に対して透明な報酬」と定義。役職ベースの手当は大部分が「自由裁量的で取り消し可能」な報酬であるため、賞与規制の対象となる「変動給」に分類されると説明している。
一方、報酬規制の対象に関しては、規模を問わず域内に拠点を置くすべての銀行に共通ルールが適用される。ただし、ボーナスの少なくも40%(高額の場合は60%)の支給を最低3年繰り延べすることや、ボーナスの半分以上を株式などで構成し、現金での支給を50%未満に抑えるとの規定に関して、EBAは規模の小さい銀行や、変動報酬の支給比率が低い銀行への適用を免除するよう勧告。欧州委員会に対し、適用除外の基準を明確にするため速やかにルール作りを進めるよう求めている。
各国当局は17年1月から最終指針に沿って報酬規制を適用することが義務づけられる。適用できない場合はEBAに理由を説明しなければならず、正当な理由がない場合、EBAは欧州司法裁判所に当該国を提訴する可能性がある。